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ジョホールバル郊外の商業ビル一棟丸ごと借り上げ。 東京ラーメン「田ぶし」の海外事業とは?

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インドネシアの首都ジャカルタに進出し、海外事業に着手していた東京ラーメンの「田ぶし」を筆頭に居酒屋などの業態を運営する外食企業のグリーンコーポレーション(本社=東京都練馬区)は、昨年秋、展開地をマレーシアのジョホールバルにも広げている。郊外の飲食店が集まる地区の4階建てビル一棟を丸ごと借り上げて進出した。

同社は同地に現地法人を設立。出店場所はジョホールバルの郊外で、住宅と飲食店が集まり、中華系マレーシア人が多く集まる場所ともいわれるマウントオースティンという街。ここに昨年1123日、ビルの1階にはラーメン店の「田ぶし(Tabushi)」、12月12日には2階に居酒屋レストランの「春田屋(Harutaya)」を立て続けに開業した。

IMG_2599びる一棟

多くの飲食店が集まる区画で、隣には高級ジャパニーズレストランの「膳戸(ZENTO)」、1区画向こうの同じ並びにはカジュアルジャパニーズレストランの「和楽(WARAKU」が出店しており、特にリーズナブルな価格とカジュアルな雰囲気を売りにしている和楽が、客足の絶えない人気店となっているようだ。

わらくぜんと

海外事業部の高橋弘弐部長と田伏廉マネジャーがジョホールバルに赴任しているが、お客からは「なぜシンガポールやクアラルンプールに店を出さないのか」と聞かれることも多いよう。しかしあえてこの地に可能性を見い出した同社は、春田屋については高級志向の膳戸、カジュアル志向の和楽の間を縫うメニューの価格設定で「中間層より少し上」の客層の取り込みにかかっている。

平均単価はラーメンの田ぶしが27.45マレーシアリンギット、居酒屋の春田屋は3537リンギットで推移。客足は田ぶしは週末の多い日で1300人、平日は100150人で、春田屋は週末1日100160人、平日50人ほどになっているという。

カウンターなし、酒は飲まない。ローカルは「ファミレス感覚」で利用

両店ともに、主要来店客は圧倒的に中華系マレーシア人が占めている。日本人在住者や駐在員は週末になると来店するものの、それでも週末の利用者数では全体の2割程度にとどまっており、平日利用はほとんどない。マレー系、インド系の民族も時折来店するというが全体の1%程度にとどまっているため、現在、中華系マレーシア人を主軸としたメニュー開発やプロモーション施策を急ピッチで進めているという。

特に多いのはファミリーでの利用だ。ラーメンの田ぶしには、日本の主流のラーメン専門店のようにカウンター席が設けられていない。カップルや友達同士、ファミリーでの利用が多くみられ、日本のように一人でラーメンを食べにくるという客がほとんど見られない。餃子のほかには、カレーや丼物、牛肉の鉄板焼き、巻きずしなどのメニューも充実しており、ラーメン専門店というよりは「ラーメンダイニング」の色が強いレストランとなっている。

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人気のラーメンは「醤油らーめん」(18.80リンギット)「チャーシュー麺」(24.80リンギット)「赤富士らーめん」(24.80リンギット)。

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(ラーメンの写真提供=グリーンコーポレーション)

酒屋の春田屋に関しても、カウンター席は設けておらず、ファミリー利用が主流。日本酒、焼酎をはじめとして酒類も取り扱ってはいるが、日本人客利用の域を超えていないようだ。

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春田屋は日本では焼きトンをメインにした居酒屋業態だが、こちらでも居酒屋として運営しているものの、日本と同じメニューのラインナップではない。ファミリーレストランのような感覚で、地元の人に受け入れられている。日本の春田屋では提供していない「御膳」メニューが定番となっており、豚生姜焼きや焼きサバ、カツ煮などの御膳が人気だ。新幹線型にご飯を盛りつけたかわいらしい「お子様カレー」(15.80リンギット)も、ファミリー客からかなりの人気が出てきているそうだ。

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(カツ煮御膳、お子様カレーの写真提供=グリーンコーポレーション)

人気の定番は、「すし」「天ぷら」「御膳」「カツカレー」。麺類では「天ざるそば」、単品では「ししゃも焼き」「茶碗蒸し」「かつ重」など。サーモンを使ったすしや刺身は、中華系の人が好む「鉄板」メニューだ。

ディナーどきに人気なのは「北海道寄せ鍋」(187.60リンギット)。鍋料理は中華系民族にとってもなじみがあり、また彼らが好む鮭を1匹まるごと使っているのがポイント。さらに魚の頭をあえて載せていることから、見た目のインパクトも絶大。家族連れが満足するように3~4人前に相当するたっぷりめの量で提供している。

北海道鍋

(北海道寄せ鍋の写真提供=グリーンコーポレーション)

メニュー開発にローカルスタッフのアイデア起用

「ようやく吹っ切れるようになったんですよね」と、メニュー開発について話す田伏マネジャー。日本食だからといって、日本と同じようなメニューを揃えたり、日本の和食の常識にとらわれたやり方だけでは、ローカルのお客に受け入れられにくいことが分かってきたのだという。

「例えば、日本だと刺身を提供するときに、飾りつけはほどほどにシンプルに提供するのが美しいといった美的感覚が一般的だと思うのですが、こちらでは見た目が”派手”でないとお客の目に止まらないんです。日本人の僕から見れば、ごちゃごちゃしているなぁ、と抵抗感があるんですが、もっとお客さんの目線によっていこう。お客さんにとっては、これが美しくて、こうすると嬉しいんだな、と考えながらメニュー開発をしていこうという考えに至りました」。

とはいえ、日本から進出した飲食事業者のプライドを曲げるわけではない。「日式レストラン」にはしないという思いが根底にあり、「日本食の伝道師」という役割を諦めているわけではなさそうだ。照り焼きチキンのメニューをキッチン担当のリーダーであるローカルシェフが開発した際には、現地の刺激の強い味のソースを使っていたため、日本の照り焼きソースを使うように指示し直すなど「日本のエッセンスを必ず持っているメニューでないと採用しません。見た目は派手でも、日本の味にこだわり、変な味にはさせません」と、日本人が厳格にコントロールすることで、ブレのないメニュー開発を目指している。

日本酒のローカルの人々への普及も諦めていない。料理とお酒のペアリングメニューをプロモーション価格で提供するなど、まずは知ってもらう努力を重ねていくという。

多言語対応で多民族のスタッフをマネジメント

グリーンコーポレーションは、海外事業を統括している高橋部長と田伏マネジャーがジョホールバルに赴任。店長を含め3人の日本人が、中華系とインド系のマレーシア人、出稼ぎに来ているフィリピン人とインドネシア人スタッフを管理している。日本と違い、多様な民族をマネジメントするのは一筋縄ではいかず苦労も多い。

それぞれの人種によって、文化的背景や考え方が違う。インド系マレーシア人は、男女ともにホールのリーダーを務めており、明るい人柄が魅力的。出稼ぎに来ているフィリピン人とインドネシア人は、労働すること自体に対して熱心など、それぞれの人種や事情によってさまざまなタイプの人がいる。一般的にもよく言われることだが、こちらの店でも「細やかさ」という点においては、日本人がもつ独特の強みになっているようだ。

前の駐在でインドネシア語をマスターした高橋部長は兄弟言語のマレー語、田伏マネジャーは英語を話し、ローカルスタッフとコミュニケーションしている。しかし「英語をほとんど話さない中華系マレーシア人のスタッフが多いですし、取引先などと込み入った経営の話をするときに、英語やマレー語では足りなく、中国語を覚える必要性も感じています」と、田伏マネジャーは多言語でのマネジメントを痛感しているそうだ。

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人が集まる商業ビルの開発を目指す

前述のとおり、同社はビル一棟を丸ごと借り上げ、1階にラーメン店、2階に居酒屋レストランを開店しているが、3階と4階は空室。屋上スペースも使えることから「集客の効果が見込め、既存の飲食業態と相乗効果をもたらせるような業種、業態の開発を思案中です」(田伏マネジャー)。業態を自社で開発するのか、既存の事業者を誘致するのかなど具体的なプランが決まっている訳ではないが、新しい事業開発にも意欲を見せ始めている。

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ジョホールバルを海外事業の拠点に

高橋部長はこの地に赴任する前、ジャカルタに駐在し、海外事業を立ち上げてきた。「富裕層や駐在員などをターゲットにする高級志向の日本食レストランが勝ち組になっていて、現地のミドル層を狙う飲食店業態については、まだまだ競争が激しい状況です」。確かに、東南アジアの中でも所得水準の高いマレーシアに比べ、爆発的に増大しているとみられるインドネシアの中間層の消費行動が追いつくには、年月を要しそうともいえそうだ。

シンガポールとの一大経済圏作りを目指した大型開発「イスカンダル計画」が進行中のジョホールバルは、東南アジアの金融都市国家シンガポールに隣接するマレーシア第2の商業規模を持つ都市で、両国間の人の往来が盛ん。グローバルなビジネス情報をキャッチしやすい地のりでもある。

日本の外食企業にとって一国の首都ではないジョホールバルはマイナーな存在かもしれないが、例えばシンガポールなどの首都圏に比べて、初期投資額や人材確保のコストを大幅に抑えられ、中華系マレーシア人を中心に需要をある程度見込めるジョホールバルを海外進出地の選択肢の一つにするのも、ある意味、理にかなっているのかもしれない。

 

店舗情報

「ラーメンダイニング 田ぶし ジョホールバル店」

「東京 春田屋」

住所

GF, No.51, Jalan Austin Height 8/3, Taman Mount Austin, 81100 Johor Bahru, Malaysia

 

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