シンガポールに在住している者にとっては、あえて書くこともないと思われるであろうほど有名なPS.Cafe。
シンガポールへの進出を考えている飲食店にとっては、その存在と成功のカギは知っておくべきものだと思いますので、取り上げようと思います。
島内に10店舗の人気店。
PS.Cafeは、1999年、当時洋服店を経営していた現オーナーが、当時のファッション業界の流行りに乗じ、洋服店内にカフェを出してみたのが始まりで、評判が評判を呼び、カフェが彼らのメインビジネスとなりました。
2017年12月現在、3つの異なるコンセプトで合計10店舗を展開、従業員数は約200人です。
内、 都心の好立地のマリーナベイを臨むONE FULLERTON店とRAFFLES CITY店の2店舗は、一昨年から経営に参画しているプライベート・エクイティ協力のもと、今年に入り立て続けにオープンしました。
2018年にはもう1店舗、マリーナエリアにもオープン予定ですが、現在の店舗の内訳は以下になります。
・元祖のカフェ「PS.Cafe」 7軒。
・テイクアウトがコンセプトの「PS Cafe Petit」 1軒。
・西洋の要素を融合させたファッショナブルな中華料理店「Chopsuey Cafe」 2軒。
2017年にオープンした2店舗以外は、都心または都心部近くの、外国人や富裕層の多く住むエリアにあります。
人気の理由は 。
正直、PS.Cafeは料理もコーヒーも、価格は特段安いというわけではなく、味も抜群とまでは言い難いのですが、なぜここまで成功を収めているのでしょうか。
それは一にも二にも「アンビエンス(雰囲気)」だと言えるでしょう。
イギリスでアートとファッションを学んでいた2人の男性と、法律を学んでいた男性が3人でオープンさせたカフェは、インテリアのみならず、食べ物や飲み物のプレゼンテーションも洗練されています。
PS.Cafeは、特に週末のブランチが人気ですが、デートや欧米人マダムの午後のおしゃべりにもよく利用され、パーティーを開催するほどでもない少人数のちょっとした友達同士の誕生祝いなどにもちょうど良い場所として使われています。
近年では「Instagram-worthy(インスタ映えのする)」なカフェとしての認知度も高いです。
10店舗を展開していますが、一般的なチェーン店とは違い、統一感を持ちながらも店舗ごとにテーマを変えています。
花瓶ひとつにもこだわりを持って選び抜いたインテリアと、立地を最大限に生かした演出がされているのも飽きられない秘訣でしょう。
デムシー・ヒルにある店舗は、オーストラリアのカフェにインスパイアされた、緑豊かな一軒家カフェ。
公共の交通機関が通っていない不便なところにあるにも関わらず、週末のブランチは長い列ができるほどの人気です。
オーチャードのパライ・ルネッサンス・ビルの中の店舗は、都心のショッピング街でありながら隣が開けた広い敷地を持つタイ大使館と言う立地を生かし、光をふんだんに取り入れた半テラス仕様の席が人気。
パリのビストロとフランス占領下であったベトナムのコロニアルな雰囲気が融合したお店です。
ヨーロッパやオーストラリアなどにおいて、飲食店の「アンビエンス」は、料理に加え評価を決める重要なポイントのひとつと考えられています。
安くて美味しいものが当たり前にあふれているシンガポール。
金銭感覚の鋭い人が多い土地柄、外食産業が成熟の度を増すにつれ、外食をする際のお店選びとして味だけでなく「アンビエンス」を重視する人が増えていると感じます。
シンガポールで成功するためのひとつのやり方として、PS Cafeは大いに参考になるのではないでしょうか。