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【知らないと損するタイ進出情報】タイの王位継承問題

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タイで生活し、あるいはタイで事業を始めようとする時、現地の人々の心の中にある「国王」の存在が、予想を超えて遙かに大きいことに気付く。国王のシンボルカラーである黄色の着衣を身にまとい、多くの国民から「ポー(お父さん)」と敬愛される様子は、タイの統治システムの根幹に国王あるいは王室制度が深く横たわっていることを実感させる。今年6月9日に在位70年を迎えたタイのプミポン国王は88歳と高齢で、2009年から国立シリラート病院に長期入院をしている。いつかは起こるであろうことが王位継承の問題である。不確かな情報や噂に惑わされることなく正しい情報によった確かな理解を行う必要がある。

6月9日に開催された国王在位70年記念式典の様子(首相府提供)

プミポン国王は1946年に現チャックリー王朝の第9代国王として即位した。欧米の教育機関で学業を修め、現代風にカメラや楽器演奏など趣味も多彩。国内では頻繁に地方視察に出掛け国民と触れ合ったほか、「王室プロジェクト」とする農業振興策などを主導してきた。1992年に起きた民主化を求める流血事件時には仲裁に乗り出し、政治が混乱に陥った際の収拾のあり方を世に示した。

タイの王位継承は、1924年制定の王室典範と歴代の憲法によって規定されてきた。王室典範に書かれた国王の皇太子指名権(第5条)、同罷免権(第7条)、あるいは王位継承者を指名せずに崩御した場合の手続規定(第8条)の解釈などから、王位継承権者の生前指名(王位継承権の授与)は国王の専権事項であることがわかる。

現在、4人いるプミポン国王の子のうち王位継承権を持っているのは長男のワチラーロンコーン皇太子(63歳)と、王子のすぐ下の妹のシリントーン王女(61歳)の二人。長女と三女は外国人と結婚するなどして権利を失った。ワチラーロンコーン皇太子には1972年に、シリントーン王女には75年にそれぞれ王位継承権が授与された。

国王の長寿と健康回復を祈るプラユット首相(首相府提供)

日本の皇室制度を知る者は、王位継承権者が同時に2人も存在しているという事実に不可思議な思いを抱くかもしれない。そこに、タイの王位継承をめぐる難しさがある。

1932年の立憲革命前、絶対王政下に制定された王室典範では、国王は皇太子を指名し、皇太子は王室の命令によって即位する(第6条)と規定する。不慮の事故など国王の指名のないまま王位継承があってもいいように、法定承継順位も第9条で規定されている。注目すべきは、同条で継承権者を「直系の男子」と限定している点だ。

タイの王室典範を読む限り、王女が王位を継承することは日本と同様に認められていない。「王女は完全に王位継承から除かれる」と第13条ではっきりと明示もされている。にもかかわらず、次女のシリントーン王女には王位継承権が授与されたという事実がある。なぜか。

戴冠記念日を記念して昨年発行された50万バーツ紙幣と在位70年を記念して今年発行された70バーツ紙幣(中銀提供)
この記事を書いた人(著者情報)

kobori

2011年11月、タイ・バンコクに意を決して単身渡った元新聞記者。東京新聞(中日新聞東京本社)、テレビ朝日で社会部に所属。警視庁記者クラブで2・4課担当を通算4年経験。銀行破綻などの各種金融事件、阪神大震災、オウム真理教事件などの取材にも当たった。事件記者出身だが、取材対象は政治・経済、社会、科学、文化までなんでも。日本の新聞、雑誌、タイのフリーペーパーやウェブサイトなどでも執筆中。著述、講演多数。

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