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東南アジアでも人気のポケモンGO。イスラム施設ではトラブルの懸念も

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世界中で人気沸騰中のスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」が東南アジアの主要国タイやマレーシアなどでも拡大している。大掛かりな初期投資が不要で、どこにいても手軽に遊べるポケモンGO。「たくさんのポケモンがゲットできる」との情報がSNSで流れれば、その日の夕方以降、特定の街角がポケモン・スポットに様変わりという現象も続いている。一方で、思わぬトラブルも。街ゆく人々の中にはスマホの画面に食い入るあまり、前方から来る車や人に気づかないケースも少なくない。また、戒律の厳しいイスラム施設では「神への冒涜」や「依存症」を懸念して処罰の対象とするところも現れた。このところのポケモン・東南アジア事情を集めた。

タイの大手銀行に勤めるエーンさん(男性、32歳)はこのところ、終業時間が待ち遠しくて仕方がない。8月6日以降、ダウンロードが可能となったポケモンGO。早速、自身のiPhoneにインストールしてみたところすっかり虜となり、本人も認める「寝ても起きても中毒状態」に。だが、銀行員という仕事柄、職場でのゲームは固く禁じられている。そこで終業後に街に繰り出すのだが、facebookなどのSNSで情報を得てその日の進出先を決めるため、「ピクニックにでも出かけるような感じで、毎日がワクワク」と笑顔を見せる。

この日の夕方に出かけた先は、商業施設やコンドミニアムなど本格開発の始まったBTS高架鉄道プラカノン駅前に広がる「W District」。すでに日は傾き、夕闇が広がっていた。ここはホテルやコンドミニアムに周囲を囲まれる一角で、オープンテラスの飲食街が広がるエリア。この1年で急激に開け、週末ともなると若いタイ人客で賑わっている。「W Districtでたくさんのポケモンがゲットできる」。エーンさんもそうした書き込みを見て姿を現した一人だった。

オープンテラスのテーブルを取り囲むように立ち並ぶポケモン・ファン。手には一様にスマホが握りしめられるが、不思議なほどに誰も何も発しない。街の騒音がなかったら奇妙なほどの静寂が広がっているだろうと容易に想像できるあたりに、ポケモン現象の〝熱さ〟が伝わってくる。

「やった、ゲット!」。わずか数分でポケモンを得たというエーンさん。「情報はSNSの口コミに限ります」と満面笑みで話していた。この日、3匹(?)のポケモンを確保したエーンさんは、「明日はシーナカリン(バンコク東部)に行ってみようと思っています」と笑顔で帰路に就いた。

こうしたポケモンGO人気がある一方で、イスラム施設では好意的とは言えない受け止め方がされている。バンコク西部にあるイスラム教のモスク。ここでは敷地内のポケモンGOを全面禁止にしている。理由は簡単。「ギャンブル同様に依存性が高く、偶像崇拝にもつながる。いずれにしても神への冒涜になりかねない」というものだ。ただ、イスラム少数派のタイにあって、表立っての意思表示をすることは避けているようだ。施設の管理責任者も施設名と氏名の公表は拒んだ。このほか、タイ政府も安全上の懸念を示している。

他方で、イスラム教徒が多数派を占めるマレーシアでは州政府が全面禁止を発表するなど強い反対の意を示しているところもある。タイ深南部と国境を接するクランタン州。当地の州政府は8月17日、増加するポケモンGOユーザーに業を煮やして、州政府施設内・敷地内でのゲームの使用を一切禁止する措置を講じた。同州はイスラム刑法を採用するイスラム色の強い地域。まだ、具体的な摘発事例は公にはなっていないが、今後、トラブルになる可能性もはらんでいる。

かくして東南アジアでも始まったポケモンGOブーム。飲食店の中には、ポケモン人気にあやかって、プロモーションを始めたところもある。今後の展開が注目される。

この記事を書いた人(著者情報)

kobori

2011年11月、タイ・バンコクに意を決して単身渡った元新聞記者。東京新聞(中日新聞東京本社)、テレビ朝日で社会部に所属。警視庁記者クラブで2・4課担当を通算4年経験。銀行破綻などの各種金融事件、阪神大震災、オウム真理教事件などの取材にも当たった。事件記者出身だが、取材対象は政治・経済、社会、科学、文化までなんでも。日本の新聞、雑誌、タイのフリーペーパーやウェブサイトなどでも執筆中。著述、講演多数。

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