インドネシア発のライドシェアサービス『Go-Jek』が、まさに快進撃とも言えるアクションを起こしている。
2010年に設立されたこの企業であるが、少なくとも3年前まではスタートアップの域を出ていなかった。
しかし、米ドル換算で100ドル程度のスマートフォンがインドネシア国内に普及すると、アプリからバイクタクシーを呼び出せるGo-Jekは市民の足として受け入れられた。
大都市各地で社会問題になっている交通渋滞も、Go-Jek躍進の一因となった。
自動車の合間をすり抜けることができる二輪車は、首都ジャカルタでの生活には欠かせないものだ。
爆発的なスマホ普及と現地の交通事情が、Go-Jekを急成長させたのである。
そんなGo-Jekは、既に新たなフェイズに突入している。
今年9月、Go-Jekのベンチャーキャピタル部門であるGo-Venturesが、地元ウェブメディア『Kumparan』への出資を行ったと発表した。
出資額こそ明らかではないが、一介のスタートアップに過ぎなかったはずのGo-Jekが出資をする側に回ったインパクトは極めて大きい。
さらに同月、現地アドテクスタートアップ『Promogo』をGo-Jekが買収。
このPromogoは、個人所有の車に広告を貼ってkm走行毎の報酬を支払うという仕組みを採用している。
有望なスタートアップに惜しみなく出資することで、Go-Jekはさらなる多角化を目指しているようだ。
それは同時に、アプリの多機能化を意味する。
Go-Venturesのような法人向け事業はともかくとして、個人が気軽に利用できるサービスは極力同一のプラットフォームにまとめる。
支払いはすべてGo-Jekの電子ウォレットGo-Payで行う。
ユーザーにとっては、新しくスマホを購入した際には真っ先にインストールしなければならないアプリになっていく。
これより先を見据えるなら、インドネシア国内で製造されたスマホにGo-Jekのアプリがプリインストールされるということも十分に考えられる。
インドネシア政府はスマホの製造産業振興を奨励し、国内で販売される4G端末にはTKDN(国内部品調達率)規制を課している。
このTKDNは30%を超えていないといけないのだが、それはソフトウェアを含む数字である。
そのような方向性から見ても、Go-Jekは極めて大きな意味合いを持っているのだ。
さて、インドネシア各地の飲食店に行くと、カウンターに並ぶGo-Jekのドライバーをよく見かける。
彼らも息抜きにレストランへ通うこともあるだろうが、大抵の場合は仕事の用件で店に来ている。
Go-JekはGo-Foodという飲食デリバリーサービスも展開しているのだ。
マクドナルドやKFCといった大手ファストフード店から、中小規模のローカル店舗まで、Go-Foodと契約している飲食店はまさに百花繚乱の装いを見せている。
このあたりも、実はインドネシア政府が目論む方向性と合致している。
日本人駐在員の間ではよく知られている話だが、インドネシア政府の方針は昔から内資優先主義だ。
外国資本より現地資本、そしてジョコ・ウィドド氏が大統領に就任してからは、中小零細業者の成長を最優先する施策がより鮮明になった。
たとえば、夫婦ふたりでサテ(焼き鳥)の飲食店を経営している場合、さすがにデリバリーサービスを始めることはできない。
それをやろうと思えば、あと2、3人は人手が欲しいところだ。
しかしGo-Foodと契約していれば人員を雇う必要はないし、注文や決済のプラットフォームもGo-Foodが提供してくれる。
つまりデリバリーを完全外注化することで、中小零細業者に多大な利益を与えているのだ。
今まで1日に数人しか客が来なかったにもかかわらず、Go-Foodと契約して1日1000件以上もの注文を受けるようになったという店もある。
ここで付け足しておかなければならないのは、インドネシアの中小零細業者は固定電話を用意していないことが殆どという事実である。
しかし、だからこそ、近年のスマホ普及が鍵になってくる。
Go-Jekを含めた事業者向けスマホアプリは、スマホ本体に対して高いスペックを要求しない。
オンラインのシューティングゲームをやるわけではないのだから、高速度の回線も必要ない。
100ドル程度のローエンド端末でも、アプリの使用に支障はない。
AppleのiPhoneやSamsungの旗艦モデルは、新興国では高級品なのだ。
こうして見ると、2010年代のインドネシアの経済成長はスマホと共にあるということがよく分かる。
【参考】
Go-Food
GO-FOOD: Menu Terserah-YouTube
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