ー お客様に心地良さを感じていただけるように、何か工夫をされているのでしょうか?
鈴木氏:常夏の国・シンガポールでは、亜熱帯特有の湿気が多く蒸し暑い日々です。
そのような中で「訪れるお客様が、少しでも快適に過ごせるように」という心遣いの一つとして、WA DON-DONでは凍らせたおしぼりを出しています。
また、この暑い国で、ビールがぬるいのは致命的です。
ビールは冷凍庫でキンキンに冷やしてから、お客様にお出ししています。
爽やかさを感じられるように、ハイボールは強炭酸にするなど、細部まで気配りをされているそうです。
シンガポールのローカル店には決してない、細やかな心遣いは「日本のおもてなし」という感じがしました。
赤いソファと木目調の壁やテーブルに、やや明るさを抑えた照明が落ち着いた空間を作り出している半個室は、喧騒に包まれた焼肉店とは一線を画していて、ラグジュアリーな雰囲気です。
ー 内装が良いからでしょうか、落ち着きますね。
鈴木氏:会長は独自の世界観を持っていて、デザイナーさんに装飾について厳しく注文を付けます。
この半個室も会長の意見が、ふんだんに取り入れられていますよ。
例えば、個室を全て壁でふさいでしまうと、隔離されている感覚が強くなり居心地が悪くなってしまうので、上部を開けようという具合に。
ー 密室にならないようにこだわりがあるのですね。
鈴木氏:上部に隙間を設けることで、店内の音が聞こえるようにしています。
その方がお店の雰囲気が分かりやすいですし、少しざわざわした音が聞こえた方が、居心地がいいと思います。
ー 時間をかけて内装も整えたのですか?
鈴木氏:考えて考えてやっても、うまくいくことはあまりないので、まずガーッとやって、後で「あ、ここはこうしよう」と、全体を見て修正していきます。
ー テストしながら進めていくということですか?
鈴木氏:はい。
海外は特にイレギュラーが多く、日本のようにちゃんと進んでくれません。
だからテストだと思って進めてみます。
最初の直感で思ったことが合っていることも多いし、お店が完成してから「あ、ここ違うな」ということもあります。
その時に「じゃ、ここはこう変えよう」と、やりながら修正していくのが早いです。
作りながら「イケてる」「イケてない」の判断をしていかないと、思ったよりももっとダサく気に入らなくなることが多いです。
なので作ってる現場を見ながら、修正していくということです。
このときのポイントは、いきなりガッツリやってしまうと修正がきかなかったり、コストがかかったりしてしまうので、こまめに考えて、こまめに修正していくことです。
もうこれは理屈じゃなく感覚ですね。
ー 頭で考えるのではなく、直感も使うのがポイントですね?
鈴木氏:そうですね。
今までの経験値もあるので、アジャストの仕方も分かります。
ー テストしながら修正するとコストアップするのではないかと存じますが、コスト面に関してはどうされているのでしょうか。
鈴木氏:コストアップは、あらかじめ大まかにあると考えて進めているので、大きな問題になったことはありません。
ー カウンター席を設けていますが、これにはこだわりがあるのだとか。
カウンターは日本で接客している時に、海外のお客様からすごく好評価でしたのでシンガポールでも作りました。
日本の店舗は、当然、日本人の口に合う料理ばかりですが、いろいろな国から観光やビジネス目的で来星された外国人のお客様に、まったく同じ味を提供しても「おいしい」と言ってくれるのは興味深いです。
カウンターだと、そういう会話のやりとりをしやすいです。
ー なぜシンガポールにお店を出そうと思ったのですか?
鈴木氏:会長が海外進出を考えていて、最初はマカオや上海に出店してプロデュースしたのですが、あまりうまくいきませんでした。
アメリカ・ニューヨークやフランス・パリを回って出店場所のリサーチもしましたが、こちらはビジネスをするというよりは、お金を稼いで遊びに行く場所という感じでピンと来ませんでした。
最終的にシンガポールに決めた理由は、いろいろな面でお世話になっている方がいたからです。
海外でビジネスをするなら、この方がいるシンガポールで出店しようということになりました。
実は、シンガポール出店の話が本格化した時、僕は日本で独立してお店を出そうと考えていました。
でも会社側から「シンガポールでやってみないか?」というお話しをいただき、年もまだ30代なのでチャレンジしたいと思い、こちらに来ました。
歌舞伎町で働いていた時に、たくさんの海外のお客様と触れ合う機会があったので、「海外でもやれるかな?」という想いがあったのも要因の一つですね。
ー では、シンガポールに決めた理由は、お世話になっている方とのご縁が大きいのですね。
鈴木氏:それはもう、一番の理由です。
うちのスタッフもみんな分かっています。
この方がいなかったら、僕はシンガポールにいません(笑)。
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