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【知らないと損するタイ進出情報】市場開放進む一方で、国境強化って?

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昨年末のASEAN経済共同体(AEC)の発足をきっかけに本格化したタイを含むCLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の市場開放。
人とモノの自由な往来は取り引きを活性化させ、地域の持続可能な経済成長を実現する切り札として大いに関心が高まっている。
ところが、こうした中、その足を引っ張るかのような国境取締強化の動きが広がっていることをご存じだろうか。
微笑みの国タイへのノービザ入国も、この年末から1年に2回までと一気に規制が厳しくなるのだ。
国境で起こっているさまざまな動きをまとめた。

ラオス・ビエンチャンのタイ大使館。「ビザ・ランのメッカ」でもある。

タイ入国管理局によるビザ(査証)を伴わない観光名目でのタイ入国(ノービザ入国)は、「日本人」であればこれまで一律30日(延長すればさらに30日)が自動的に認められてきた。
ラオスやカンボジアなどの隣接国でいわゆる「ビザ・ラン」を繰り返すことで、1年程度であれば事実上の長期滞在が可能となっていた。
(ただし、「ビザ・ラン」も数回繰り返すことでパスポートに「警告」を示すスタンプが押され、そのままでのそれ以上の継続は難しい。)

ところが、これを根底から覆す決定が入管からこのほど出された。
今年12月31日からビザなし陸路での入国を1年間で2回までに限定し、それ以上はビザを取得するよう一律に促していくというのだ。
やんわりとした表現ではあるものの、事実上の「ビザ・ラン」拒否。
陸路による入国がタイ国内での不法就労の原因となっているとして、社会浄化を進めるプラユット暫定軍事政権が「待った」をかけたのだった。
これにより、就労ビザなどの特別な滞在許可取得が原則必要となった。

タイ・カンボジア国境。多くの人とモノが通過する。

タイにおいて外国人が就労することは原則として禁止されており、日本人も例外ではない。
ゆえに、特別に就労を許してもらう「労働許可」を得なければならない。
自営業者など個人への許可は認められてはおらず、このためタイで働く日本人の全てが名目上はいずれかの企業などの法人に所属していることになる。
皮肉にも、タイにおいて「フリーランス」という仕事の形態は形式上はそもそも存在しないのだ。

人の出入りだけではない。
タイ政府はCLMV諸国との国境貿易を拡大させるための施策として、特定の地区を対象に関税を減免する「国境貿易策」を実施している。
国境貿易は拡大の一途で、昨年一年間の総額は約1兆2000億バーツ(約3兆6000億円)。
今年も拡大傾向が続いており、さらなる増加が見込まれている。
ところが、こうした中、国税当局は同政策が国際的な脱税の温床となっているとして、対応策を早期に打ち出すことを決めたのだった。

タイとカンボジアの鉄路は間もなく復活する。

概要はこうだ。
国境貿易特区での取り引きを希望する事業者はその商取引内容を電子上で申請。
税関当局が審査し、これらに関税を課す仕組みとなっている。
ところが、特区外での取り引きを水増し申請するなどの不正が引き起こされていることから、実際の通関量と電子上の数値に齟齬が生じてしまっているというのだ。
免税品が特区を通じ、タイ国内の闇市場に不当に流入しているとの情報もある。

こうしたことから税関当局は、特区内における取引量や取引価格、さらには事業者ごとに通関利用回数に上限を設定するなどの不正防止策を検討している。
せっかくの貿易自由化に水を差す不正行為。
経済の減速原因とならなければと市場では見ている。

カンボジア国境近くのタイ・アランヤプラテートの市場。

隣接諸国による新たな課税政策も、国境貿易に影響を与えそうだ。
ラオス政府はこのほど国境を行き来するラオス国籍者と在住外国人に対し、携行品への付加価値税(VAT)の一斉課税を開始した。
税率は10%で、ラオスとタイを結ぶ4本ある「友好橋」では税関による徴税が始まっている。
ラオス当局による税収は上がったものの、これによりラオス・タイ間の貿易量が半分程度落ち込んだとの指摘も出ている。

もっとも現在のところ、個人で消費するための携行品については免税を認めようと、1カ月に2回までの通行は非課税とされている。
ただ、メコン川をはさんだタイ・ラオス両国間は伝統的な「生活路」としての位置付けがあり、一律課税とした影響は計り知れない。
同施策による貿易の停滞が懸念されている。

タイとラオスは鉄道でも結ばれている。ラオス・ターナレーン駅。

来年早々には、タイ・バンコクとカンボジアのプノンペンが1本のレールで結ばれることが確実となるなど華やかな話題の続いていたCLMV。
だが、一方で国境の取り締まりが強化されるなど不透明な動きも広がっている。

この記事を書いた人(著者情報)

kobori

2011年11月、タイ・バンコクに意を決して単身渡った元新聞記者。東京新聞(中日新聞東京本社)、テレビ朝日で社会部に所属。警視庁記者クラブで2・4課担当を通算4年経験。銀行破綻などの各種金融事件、阪神大震災、オウム真理教事件などの取材にも当たった。事件記者出身だが、取材対象は政治・経済、社会、科学、文化までなんでも。日本の新聞、雑誌、タイのフリーペーパーやウェブサイトなどでも執筆中。著述、講演多数。

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