近年、ベトナムでは空前の日本食ブームが巻き起こっている。
ホーチミン市内には「寿司」や「焼肉」といった看板を掲げる飲食店がここ数年で増加している。
JETROの調査によれば、2013年時点でベトナムにおける日本食料理店の数は約450店舗(ホーチミンが300店舗、ハノイが150店舗)、2016年時点では約770店舗(ホーチミンが400店舗超、ハノイが300店舗弱)と言われており、たったの3年で70%の増加を遂げているという。
その成長度の高さには目を見張るばかりだ。
この爆発的な飲食店の成長を促したことには、やはりベトナムの経済成長が大きく関係している。
元来、ホーチミン市では日本料理店といえばレタントン通り(ベトナム最大の日本人街)にしかなかったため、
非常に限られた人々だけが食べるものに過ぎなかった。
その客層も大半が在越日本人であり、ゆえにその値段も高価で、一般のベトナム人が気軽に口にすることができなかったのだ。
しかし、2000年後半以降、個人の所得が大幅に上昇し、さらに日本食をビジネスチャンスと捉えたベトナム人投資家によって多くの日本食料理店が現れ始めたのだ。
これにより、徐々にではあるが一般のベトナム人でも口にできるようなお手頃な価格の日本料理店が増え始め、客層が日本人ではなくベトナム人へとシフトし始めたのだ。
実際、ベトナムの地場系新聞の報道によれば、近年の日本料理店の客層はその9割がベトナム人で占められているという。
このようにして、やっと日本食が一般のベトナム人にも近しくなるという絶好のタイミングにある訳だが、高い参入障壁がまだまだ日系飲食店のベトナム進出を阻んでいる状態にある。
特にベトナム進出を検討する日系飲食店が懸念すべきポイントは外資規制にあるといえる。
実は、ベトナムでは外資100%による路面店の出店は当局の規制により非常に難しい状況となっている。
立地条件が肝心な飲食店にとって、この規制は致命的な問題といえる。
この問題を回避するためにローカル企業との合弁と言うかたちで店舗を構えることが可能なケースも多々見受けられるが、信頼できるパートナーを探し出すには相当の時間と労力、そして費用を要する事はもはや言うまでもない。
また、外資の飲食店は出店に至るまでに多くの手続きを踏む必要がある。
簡単なものでも、出店先テナントの賃貸契約、IRC(投資登録証明書)、ERC(企業登録証明書)、食品衛生ライセンスなどを取得する必要があり、軽く見積もっても設立して事業運営できるまでには相当な期間を要する。
その期間はまちまちだが、1年を要する事もザラではない。
さらに言えば、ブームの移ろいが激しいベトナムにおいて設立までに膨大な時間がかかる事は大きなリスクを意味する。
実際、予期したブームの波にうまく乗れず、撤退を余儀なくされた企業も枚挙に暇がないのが現状である。
もちろん、今後は外資に対する規制も徐々にではあるが緩和されていく事が期待されているが、実際に適用されるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
今後も日本食ブームは加熱の一途を辿るであろう事はもはや自明であるが、上記を加味すると必ずしも「日系飲食店」が成功するとは限らない。
とはいえ、綿密な計画、必要に応じた現地パートナーの開拓、ベトナムでのネットワーク構築など、適切なサポート、手段を用いればその可能性は非常に大きい。
ベトナム進出を目指される方はまずは必要なノウハウの収集、提供先を見つけることが成功の第一歩と言えよう。
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