気になるのは、その日本食の味である。
筆者が某シンガポール人の経営する日本食レストラン数店で体験した、あくまでも個人的な意見を述べてみたいと思う。
・丼物のご飯が若干硬かった
・揚げ出し豆腐は、少々油臭かったので古い油を使って揚げたと思われる
・揚げ物は高温で揚げ過ぎているようで、衣がサクサクではなくカリカリしていた
・天ぷらは衣が分厚く、小麦粉が生の部分もあった
・具材の組み合わせが、日本人の発想にはないもの(鰻と明太子丼、卵と明太子の握りなど)
日本人からすると、「シンガポール人が経営しているので、多少味が異なるのは当然かも」となるかもしれない。
日本で本物の日本食を食べたことのないシンガポール人にとっては、違いが分からない可能性はあるだろう。
そして、ローカルフードとフュージョンしたオリジナルメニューなど、彼らの食文化を取り入れた味を提供している点は、正統な日本食よりも落ち着く味なのかとも想像する。
ただし、もちろん日本人の口に合うこともある。
・日本から仕入れた素材でできた焼魚・焼肉や炒め物(例:野菜炒め)、茶わん蒸し(シンガポールでは、茶わん蒸しがセットになっている日本食が多い)は日本人好みの味だった
・サーモンを使ったお刺身はおいしかった(食品をほとんど輸入に頼っているシンガポールでは、オーストラリアのタスマニアやチリ、カナダなど、おいしいサーモンが獲れることで有名な国・地域からの輸入品が流通している)
・長年シンガポールの日本食レストランで勤務したシェフがいるレストランでスタンダードなメニュー(カレーライス、親子丼、焼きそばなど)をいただいた際は、おいしくいただけた
実は、筆者も2度ほどシンガポール人から「我々が投資するから、日本食レストランを開いてみないか?」と尋ねられたことがある。
シンガポールには、日本人経営者や日本企業によって会席などに使われるかしこまったレストラン(例:ホテル「Pan Pacific Singapore」にあるKeyaki Japanese Restaurantや「Concorde Hotel」にあるNogawaなど)から家庭的な料理を提供する飲食店、居酒屋、カフェなど、多彩かつ正統な日本食店がすでに多く存在しているにも関わらず、出店を検討しているというのだ。
なぜそんなに日本食レストランを出店したいのか聞いたところ、「シンガポール人は日本食が大好きだから絶対需要がある。
そして私達も日本食は大好き。
だから日本食を作れる人を雇って、シンガポール人が気軽に行けるレストランを開きたい」と返ってきた。
ローカル視点で、シンガポールの日本食需要は今後も高まるということだ。
実際、屋台が並ぶホーカーセンターでは、シンガポール人経営ではあるが日本食専門の屋台が数多く見られ、食事時になると人々が行列を作っている。
これからはシンガポール人の経営者が、シンガポール人のために、この土地に根付いた、そして趣向を凝らした日本食レストランを増やしていくのかもしれない。
※1シンガポールドル=約77円で換算
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