インドネシアでB2C事業を検討する上で、キャッシュレス決済を理解しておくことは重要です。
特に、近年急速に利用シーンが増えている「E-Wallet(スマホ向け電子マネー決済アプリ)」事情は押さえておきたいものです。
本記事では簡単にインドネシアのキャッシュレス事情と、主要なE-Walletのサービス(※)をご紹介します。
(※)本記事では「スマホ向け電子マネー決済アプリ」のことを指します。日本で言えばPayPayやLine Payの位置付けのサービスです。
インドネシアでは2021年現在、急速にキャッシュレス化が進んでいます。
キャッシュレス決済の手段としては、主に以下の方法があります。
①デビットカードやクレジットカード
②モバイルバンキング(スマホアプリ経由での銀行口座のオンライン振込など、金融機関のサービスを利用できる)
③カード型電子マネー(Flazzやe-moneyなど銀行が主体のカード型電子マネー)
④E-wallet(OVOやGoPayなどのスマホ向け電子マネー決済アプリ)
特に③と④の電子マネーの伸びが顕著です。
インドネシア銀行(BI)によると、電子マネー取引の価値は2020年に201兆ルピア(139.5億ドル、約1兆5,477億円)に達し、2019年の145兆ルピア(100.7億ドル、約1兆1,165億円)から38.62%増加しました。
2020年1月時点での比率を見ると、電子マネー取引の28%が小売りで、次に輸送(27%)、食品注文(20%)、電子コマース(15%)、請求書の支払い(7%)が続きます。
2021年にはさらに32%の成長が予測されており、電子マネーによる取引額は184.7億ドル(約2兆468億4,540万円)まで伸びる可能性があります。
※参考1:THE ASIAN BANKER
この急成長の中でも特筆すべきはE-walletでしょう。
2020年2月に調査会社のIpsos in Indonesiaが行った調査によれば、E-Walletの利用者は2020年時点で5190万人いるが、2023年には7590万人まで伸びると予測されています。
※参考2:Ipsos Marketing Summit ” Indonesia The Next Cashless Society”
日本の常識からは考えられないかもしれませんが、インドネシアでは銀行口座の普及率は50%弱(2017年世界銀行調べ)です。
一方でスマートフォンの普及率は60%を超えており(※参考1)、銀行口座を超えています。
インドネシアで銀行口座が広がらないのは、地理的な理由が大きいと言われます。
具体的には、近隣に銀行や役所がなく、銀行口座開設手続きの負担(銀行の訪問自体や書類の準備負担)が大きいエリアが、まだまだ多くあるということです。
しかし、E-Walletはスマートフォンさえあれば、どこにいても開設できます。
インドネシアの都市部で生活していると、モバイルバンキングを活用した「オンライン振込」も非常によく使われます。
しかし「インドネシア全土」となると銀行口座を保有していない人が多いことから、その利用に限界があり、E-Walletが普及するのは自然な流れだと感じます。
また、上記の地理的条件に加えて、2020年以降発生している新型コロナウイルスのパンデミックにより「オンライン決済の必然性」が生まれました。
このこともE-Walletの普及に拍車をかけているでしょう。
消費者だけではなく、経営者や政府にもメリットがあります。
インドネシアの店舗では金銭の盗難が少なくありません。
ルピアの桁数が多いことも影響しているのでしょうが、現場での数字の取り扱いミスが多頻度で発生してもいます(いわゆるレジが合わない状態)。
一方、E-Wallet決済では支払い時の数値ミスがグッと減ります(完全なオンライン販売だとミスはゼロになる)。
取引ログによりお金の流れも明瞭になり、時間や場所を問わずにオンラインで確認できます。
政府も不透明な現金取引を追うより、デジタルで取引された方が正しく税金を徴収できます。
上記の事情も、さらにE-Walletの普及を押し上げています。
筆者はジャカルタの中心部で生活していますが、最近は財布の中にほとんど現金を入れなくなりました。
ECやオンラインデリバリーだけではなく、コンビニや食料品の買い出し、さらにクリーニングの支払いまで全てE-Walletで完結しています。
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