『【インドネシア】インドネシアの主要ECプラットフォーム3選』の記事で紹介しましたが、現在インドネシアではEC市場が急速に成長しています。
個人的な意見も含みますが、パンデミックが収まった後もインドネシアのEC市場の成長は止まらないでしょう。
いえ、もしかすると2022年は2021年以上の成長を見せるかもしれません。
その根拠の1つが「C向けコールドチェーン(低温での流通網)の普及」です。
このコールドチェーンの普及はインドネシア人の生活(買う側も売る側も)を大きく変える可能性があると感じています。
今回は、そんなインドネシアのコールドチェーンの状況についてご紹介します。
最初に2021年12月時点での、ジャカルタにおけるEC×コールドチェーンがどのような状況か、消費者視点でご紹介しておきます。
2020年のパンデミックをきっかけとして、ジャカルタでは食料品をオンラインで購入する人達が増えました。
ここでいう食料品には、スーパーで販売される生鮮食品もあれば、飲食店や個人商店が製造販売する料理なども含みます。
ここまで書くと「あ、ジャカルタにはすでにコールドチェーンがあるんだ」と思われるかもしれません。
しかし、そこはインドネシア。
なんと今のところは「常温配送」で届けられます。
冷凍ソーセージを購入しようが、アイスクリームを購入しようが、基本はコールドチェーンではなく常温配送です。
ただ、ほとんどの場合は「バイク便」での配送、「半日程度で届けられる範囲」に限定されています。
とはいえ、袋に「冷却用アイスジェルパック」を入れて(入れないお店もある)そのまま配送しているだけですから、運悪く受け取れずにアパートのロビーで保管された日には……、見事に半解凍されていることもざらにあります。
こんな状況ではありますが、「冷たいものでもバイク便で即座に届けられるようになった」というのは大きな進歩です。
少し補足しますが、以前から氷などの冷たいものをバイク便で運ぶ文化はありました。
しかし、迅速な配送ができる「バイクを自前で確保しているお店」、もしくは冷蔵(凍)車を持っている大手企業に限られていました。
現在は、配車アプリにより誰でも迅速にバイク便を手配できます。
これにより冷たいものを販売するお店の裾野が広がりました。
少し長くなりましたが、このような背景がありオンラインで販売・購入する物の選択肢として「冷蔵・冷凍食品」が当たり前に入ってきました。
そうなれば、次は自然と「遠くへも運んでほしい(※)」というニーズが出てきます。
遠方にも販売して商圏を広げたいというお店も多いでしょう。
コールドチェーンの需要は高まっています。
※バイク便は常温配送のため近距離に限られる
実際にインドネシアのコールドチェーン市場は、大きな成長が期待されています。
2020年9月、運送業界の業界団体であるインドネシアロジスティクス&フォワーダー協会(ALFI / Asosiasi Logistik dan Forwarder Indonesia)の会長であるYukki Nugrahawan Hanafiは、「インドネシアのコールドチェーン市場は新たな需要の出現とともに8〜10%成長する」と発言しています。
また「B2BだけではなくB2Cの需要も増えていくだろう」とも語っています。
参照:Indonesian Cold Chain Market Grows Fast, Here’s the Logistics Player’s Point of View(translogtoday.com)
最近では、インドネシアコールドチェーン協会(ARPI:Asosiasi Rantai Pendingin Indonesia)のHasanuddin Yasni会長が「2025年に冷凍食品市場が200兆ルピア(約1兆5,800億円)に達する可能性がある」と予測しています。
2021年の同市場規模が95兆ルピア(約7,505億円)との予測ですので、向こう5年で倍以上に成長する見込みということです。
ものすごい成長率ですね。
参照:Bisnis frozen food menjamur, ARPI prediksi nilai pasar capai Rp 95 triliun tahun ini
今後の成長が期待されるインドネシアのコールドチェーンですが、実はC向けのコールドチェーンはすでに登場しています。
いわゆるインドネシア版の「クール宅急便」です。
コールドチェーンサービスを提供しているのは、Paxelという配送サービスです。
Paxelは「通常のバイク便では対応できない都市間の配送」に強く、かつ速度を重視したサービスです。
また、常温だけではなく冷蔵や冷凍食品にも対応しているのが特徴です。
各拠点に冷蔵庫と冷凍庫を備えており、都市内を移動する一部のバイクにも冷蔵・冷凍ボックスを搭載しています。
今のところはサービスの利用料も非常に安く、通常便に1000~4000ルピア(約8~32円)を上乗せするだけでクール便を利用できます。
現在はジャカルタやスラバヤ(ジャワ島北東部)をはじめとした「拠点のある大都市間」のみが対象となっていますが、利用者が増えれば利用エリアは拡大していくでしょう。
本記事では触れませんでしたが、インドネシアのコールドチェーン発展には課題もあります。
コールドチェーンを提供する運送会社は莫大(ばくだい)な投資が必要になりますし、配送スタッフオペレーションの標準化も同時並行で進めなければなりません。
またコールドチェーンの利用者であるお店や消費者への啓蒙も必要になってくるでしょう。
しかし、順調に拠点や設備が増えていき、スタッフのオペレーションも安定すれば、大きな変化をインドネシアにもたらす可能性があります。
地方の特産物(例えばカニやエビなど)や、飲食店やお菓子屋のスイーツ(例えばケーキなど)も、コールドチェーンを使うことで冷たいまま全国へ販売することができます。
今まで、お店がインドネシア全国で商売するには莫大な投資と時間が必要でした。
広大なインドネシアに自前で販売拠点を作る必要があったからです。
しかし、コールドチェーンが実現すればインドネシアの常識がまた1つ変わるかもしれませんね。
冷蔵や冷凍食品を扱うお店でも、運送業者のコールドチェーンを使うことで、一拠点から全国を相手に商売することも可能でしょう。
2022年のインドネシアの変化に、ぜひご注目ください。
※1 インドネシアルピア = 0.0079円で換算
メインメニュー
教えてASEANコラム
お問い合わせ
人気記事ランキング
新着記事
国別で記事を探す
おすすめキーワードで記事を探す
ライター紹介