2013年12月、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され(※1)、ビフォーコロナの訪日客の急増(※2)が影響して、タイからも日本に旅行したことのある人が増え、日本食への関心が高まっています(※3)。
日本滞在中に「本場の味」を知ったことで、タイ人の中にも「本物志向」の日本食を求める人が多くなり、高級路線の和食レストランが増えてきました。
タイの日本食全体を見ても、取り扱う食材が豊富になり、メニューのラインアップが充実しましたが、一方で「タイ人の好み」に合わせたローカライズも根強く残っています。
今回は、そんなタイ人ウケするローカライズとタイ在住日本人の反応についてまとめてみました。
タイ人の多くが「辛くないとおいしくない」という味覚を持っているため、日本食レストランでも、少なからずその影響を受けたローカライズを目にします。
代表的なメニューは日本の麺類と酸っぱ辛いトムヤムクンのスープを組み合わせた「トムヤムラーメン」や「トムヤムうどん」。
激辛ドレッシングを使った「スパイシーサーモンサラダ」もタイ人が好むメニューです。
日本のすき焼き鍋をアレンジした「タイスキ」は完全にローカライズされ、辛いタレで食べるタイ料理へと変化を遂げました。
タイにも定食スタイルのセットメニューを出すレストランが増えてきている中で、気になる点が1つ。
それは、本来「漬け物」があるべき場所に置かれている「キムチ」の存在です。
タイ人は日本の漬け物を食べ慣れていないため、知名度の高いキムチが選ばれるのかも知れません。
日本人としては、肉料理ならまだしも、そばやちらしずしに添えるのはいかがなものか?と思ってしまうアレンジです。
辛みだけでなく「酸味・塩味・甘味」の3つを感じられることが、タイ人にとって味を評価する際の決め手とされています。
タイラーメンについてくる卓上調味料(粉唐辛子・お酢・ナンプラー・砂糖)をイメージすると分かりやすいでしょう。
日本食には酸味を付ける料理が少なく、素材本来の味や塩味、出汁によるうま味がメインですよね。
これをタイ人の味覚に合わせてアレンジすると……どうなると思いますか?
なんと、甘くないはずの料理が甘くなってしまうのです。
具体的には「サンドイッチ(マヨネーズが甘い)」「みそ汁」「焼きそば」など。
こっちの方がおいしいと感じるよ!と独自のアレンジを加えたのでしょうか……。
1口食べた瞬間、想定外の甘さに舌がビックリすることもあります。
生魚を食べる習慣のないタイ人と日本食レストランに行く際、以前は相手が食べやすいようにとカリフォルニアロールなどの巻物を選んでいました。
それが近年ではすしネタの種類が豊富になり、にぎりずしを好むタイ人が増え、誰もが日本食を楽しめる空気感は高まっています。
ただ、いまだに生モノが苦手な人も少なくないのは事実。
そのため、ローカル店では現在もカニカマがすしネタや刺身として人気です。
タイで人気のカニカマは、昔ながらの赤いカニカマ。
本物の蟹の身を再現した日本のカニカマではありません。
懐かしさを覚えるカニカマたちが堂々と刺身盛り合わせに並び、すしネタとして提供されているのを見ると「ここはタイだなぁ」と感じます。
日本食ブームによりタイ産日本米の流通量が増え、和食に合うしっとりもちもちのお米が身近になりました。
その一方で、日本米のおいしい炊き方が浸透していないと感じることも。
タイ人の好みに合わせているのか、日本米のおいしい炊き方を知らないのか……?
実際のところは分かりませんが、ちょうどいい炊き加減を把握しているレストランに出合うと日本人として大変うれしくなります。
タイ米は吸水時間なしで少な目の水で炊きパラパラ感を大切にするため、これを「タイ人の好きな炊き加減」として日本米に当てはめているのかも知れません。
お米の炊き方に関しては、タイスタイルを忘れてほしいと切に願います!
お米について付け加えると、ローカル店では酢飯ではないただのご飯にネタがのったおすしが出てくることも……。
タイ人は猫舌が多いため、ラーメン・そば・うどんのスープや汁は日本と比較して「ぬるい」ことが一般的です。
日系飲食店の多くもスープの温度をぬるく調整して提供しているようですが、タイに住んでいる日本人には不評。
湯気の立った熱々のラーメンが恋しい!というのが正直な感想です。
麺の硬さやスープの濃さを選べるラーメン店も出てきているので、スープの熱さが指定できるお店もあると、在住日本人に喜ばれるかも知れませんね。
日本食ブームの影響により、タイではローカル店を含め日本食レストランの数が増え、料理のクオリティも上がりました。
コロナ禍で気軽に日本旅行ができないため、親日家のタイ人をターゲットに、今まで日本でしか食べられなかったおすしや高級焼肉を提供するレストランが増えてきたように感じます。
タイで成功するためには現地のタイ人に受け入れられることが重要ですが、それと同時にタイ在住の日本人からも認められる飲食店が増えていくことを願っています!
【出典】
(※1) 農林水産省:「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています
(※2) 日本政府観光局(JNTO):ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移
(※3) 株式会社アスマーク:タイでは8割以上の人が、月1回は日本食を食べる~タイの「食」に関する海外調査(食生活・外食実態編)~(プレスリリース)
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