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ウクライナ情勢で世界経済が混乱する中、ASEANへの接近を強化する中国

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ウクライナに侵攻するロシアに対し欧米諸国は経済制裁を強化するなど、世界経済へ大きな影響が出ています。
原油や海産物など日本はその多くをロシアに依存していることから、既に日本企業に影響が出ており、経済制裁の長期化は日本経済にとっても大きな懸念材料です。
一方、世界のロシアへのイメージが悪化する中、中国はむしろロシアへ経済的接近を図っており、今後世界経済は“欧米”VS“中露”の分裂状態が顕著になるとの指摘が増えています。

ロシア侵攻以前のウクライナの街並み



そのようになれば、ウクライナ情勢の長期化によって日中経済が悪化する可能性は十分考えられ、日本企業は戦略的に活動していかなければなりませんし、中国からのシフトということでASEAN諸国の重要性はさらに高まるでしょう。

欧米が対ロシアに集中する中、中国はASEANとの関係強化に努めています。
中国の王毅外相は2022年3月31日からフィリピンやミャンマー、タイ、インドネシアの外務大臣を相次いで中国に招待し、政治経済的な関係を強化することで一致しました。
ウクライナ情勢で東南アジア諸国は大国の紛争に巻き込まれたくないとの本音があり、現在でもシンガポール以外の国々はロシアへの非難を避け、経済重視の外交を行っています。
よって、このような世界経済が荒れるときに、中国と関係を強化できることはASEAN各国にとって都合のいい話となるでしょう。

正直なところ、世界経済が“欧米”VS“中露“の分裂状態になれば、中国のASEANへの影響力増大は日本経済にとっては避けたいシナリオです。
なぜならば、現地企業が中国と結び付けば、見えない圧力が掛かり、日本企業とつながることが政治的に難しくなるからです。

習近平国家主席

しかし、明るい話がないわけではありません。
例えば、シンガポールのISEASユソフ・イシャク研究所(学術政策研究機関)が2022年2月に公表した調査結果(ASEAN各国の研究者やジャーナリストが回答)によると、「東南アジアで最も経済的な影響力がある国は」との問いに対し、中国が76.7%でトップとなり、「政治的に影響力がある国は」でも中国が54.4%でトップとなりました。
しかし、政治的、経済的な影響力を高める中国に対する警戒感も高まっているようで、「南シナ海での海洋覇権など、中国は東南アジアを勢力圏にしようとしている」との問いに対して4割以上が懸念していると答え、「米中対立が強まる中、ASEANはどちらと同盟を結ぶべきか」との問いに57%が米国、43%が中国と回答しました。
ASEAN内部で中国脅威論が今後さらに高まれば、経済外交を重視するASEAN諸国は日本をステークホルダーとして選択する機会が増えそうです。

筆者の周辺でも、ウクライナ情勢で欧米とロシアが対立を激化させる中、中国がASEANに接近しているとして、例えば昨年クーデターがあったミャンマーの他、タイ、カンボジアなどへ進出を強化しようとする企業が実際にあります。
また、いずれ中国と日本の経済関係悪化を見据え、中国から一部規模縮小し、その分をベトナムやタイなどに移転させようと新たな経営戦略を練る企業もみられます。

今後は、中国がウクライナ情勢からどのように経済外交を展開し、そこからいかなるビジネスチャンスが生まれていくかをみていく必要があるでしょう。

出典:ISEASユソフ・イシャク研究所「The State of Southeast Asia: 2022 Survey Report」



この記事を書いた人(著者情報)

サンシーロ

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