ロシアによるウクライナ侵攻から2ヶ月が過ぎましたが、依然として状況は深刻です。
プーチン大統領は強気の態度を崩しておらず、欧米もロシアへの経済制裁を緩める気配は一切見えず、世界経済への悪影響は長期化が避けられない状況です。
そのような中、岸田首相は欧州歴訪の前にインドネシアとベトナム、タイを相次いで訪問しました。
今回の目的はコロナ禍で鈍った日本ASEANの経済を再び活性化させることにありましたが、最大の狙いは対ロシアでASEAN諸国に共同歩調を促すことでした。
案の定、岸田首相は各国指導者との会談でそれを求めたようですが、戦闘の停止では一致したものの、ロシアへの経済制裁では意見・姿勢の違いが表面化しました。
例えば、2022年11月に開催されるG20(主要20か国・地域)の首脳会議で議長国となるインドネシアのジョコ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領を招待する他、ロシアのプーチン大統領が出席する予定だと明らかにしました。
これについて米国のバイデン政権は反発しましたが、ジョコ大統領は「世界が結束するべきで亀裂を生じさせるべきではない」との意思を示しています。
今日、ASEANでロシアを非難し、制裁を実施しているのはシンガポールのみで、インドネシアとベトナム、タイなどはそれを回避しています。
当然ながら、ASEAN諸国はロシアと独自に友好関係を有しており、ロシア産原油や天然ガスなど世界経済における存在感を考えれば、簡単に欧米や日本についていけないという政治的事情があります。
また、ASEAN各国には米中、もしくは欧米とロシアの対立など大国間の争いごとに巻き込まれたくない、ASEANが米中対立の主戦場になってほしくないという本音があります。
欧米や日本、ロシアと比較すれば、多くのASEAN諸国の経済規模は小さく、また、コロナ禍で鈍化した経済の再活性化を第一に望んでいることもあり、大国間の争いにはなるべく関与せずに大国との経済活動を再開したい狙いがあります。
これまで、日本とASEAN諸国はお互いがお互いを必要とする、まさにウィンウィンの関係でした。
もちろん、今後もその関係が大きく転換することはないでしょう。
しかし、今回の岸田首相のASEAN訪問には1つのリスクが内在しています。
ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、日本がASEAN諸国に対ロシアで欧米と共同歩調を取るよう迫り過ぎると、その考えに同調できない国が出てくることが考えられます。
そうなると、これまで良好だった日本とASEAN諸国との関係に政治的摩擦が生じはじめ、経済関係にも悪影響が出ることが懸念されます。
今日でもASEAN諸国、特にインドネシアやマレーシア、フィリピン、タイは米中競争の狭間の中で難しい舵取りを余儀なくされており、日本のこういった姿勢がASEANとの関係を不安定にさせる恐れがあります。
この可能性は高いものではありませんが、1つのリスクとして今後注視していく必要があるでしょう。
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