新型コロナウイルスの感染拡大から3年あまりがたち、台湾有事やウクライナ侵攻などによって米中露の大国間対立が激化するなか、ASEANの日本への意識に大きな変化が見られます。
外務省が2023年5月25日に発表したアンケート調査「令和3年度海外における対日世論調査」によると、「自国にとって、今後重要なパートナーとなる国・機関」の設問について、日本と回答した企業は43%だった一方(2019年度の前回調査から8ポイント低下)、中国と回答した企業が48%と初めて日本を上回りました。
また、「今後の重要なパートナー」として日本よりも中国と回答した比率が高かった国は、カンボジア(中国とした回答71%)、ブルネイ(同61%)、タイ(同46%)、マレーシア(同55%)、シンガポール(同58%)、ラオス(同33%)となりました。
この統計から何が読み取れるでしょうか。
国際政治的には、まず中国の影響力が近年ASEAN各国で急速に高まっていることがあります。
これは世界各国のGDPを比較すれば分かりますが、中国の経済発展は目覚ましく、21世紀初頭には日本が経済力で中国を上回っていたものの、それ以降中国の経済成長率は10%近くを維持し、2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国となりました。
そして、中国と日本の経済力はどんどん差が開き、今日の中国の経済力は日本の3倍にまで成長し、今後は米国を追い抜くと予測されています。
そして、中国は今後成長が見込まれるASEANを極めて重視しています。
中国は豊富な資金を武器にASEAN各国を支援し、インフラ整備や都市化などによって各国で影響力を高めているのです。
コロナ禍になり、日本は閉鎖的になりましたが、その中でも中国はASEANへの経済支援強化を維持しています。
こういった中国の姿がASEAN各国の市民の間でも徐々に浸透し、遂には今後重要になるパートナー国で日本を上回る結果になったのです。
特に、カンボジアやラオスは中国との経済的結びつきが強く、既に日本が入ることが難しい政治環境になっています。
上記統計では、ベトナムやフィリピン、インドネシアなど中国と南シナ海問題で対立する国々は日本が上回る結果となりました。
しかし、中国は今後こういった国々へのテコ入れをさらに強化してくることでしょう。
ASEANでも極めて親日的なインドネシアでは、2022年9月1日に中国製高速列車の第1号がジャカルタに到着しました。
インドネシアでは高速鉄道の導入を進めていますが、2015年、その施工工事の受注を巡って日本と中国が競いました。
結果的に日本は中国に受注を取られました。
ASEANでは日本を巡る環境が徐々に変化しています。
これまで日本にとってASEANは魅力的な市場で、経済活動がしやすい環境がありました。
しかし、上述のような環境の変化は現地の日本企業にとって決して好ましいものではありません。
日中関係は現在、協調というより競争、対立の構図にあります。
日本企業としてはこういった変化を敏感に理解する必要があります。
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