ここ数年、東南アジアのナイトライフを席巻してきたルーフトップバーブームが、昨年あたりからやっとヤンゴンにも到達した。
しかし、周辺諸国に比べ、格段に雨季の雨が激しいこの地では、各店が工夫を凝らす必要に迫られている。
東南アジアにおけるルーフトップバーの流行を牽引してきたのは、2003年にオープンしたバンコクのレストラン「シロッコ」に併設する「スカイバー」だろう。
5つ星ホテル「ルブア・アット・ステートタワー」の63階に位置し、高さはなんと247m。
眼下に広がるバンコクの夜景はまさに絶景で、いまやバンコク有数の観光名所となっている。
「シロッコ」の成功に端を発し、その後10年ほどの間に、バンコクではルーフトップバーが次々とオープン。
2016年の段階では、有名店だけで数十軒にも及んでいる。
この流行は周辺国へも広がり、マレーシア・クアラルンプールの「ルナバー」やバンコクと同名の「スカイバー」、シンガポールの「ワンアルティテュード」、インドネシア・ジャカルタの「スカイ」、ベトナム・ホーチミンの「チルスカイバー」などが、眺望の素晴らしさと高級感溢れる雰囲気とで名を馳せている。
外資が進出しにくい状況にあった軍事政権が続いたミャンマーでは、こうした流行には長く無縁の状態が続いていた。
2011年に誕生した前政権が民主化に舵を切り、外国企業進出に勢いがついてきたのが2013年。
その頃から在住外国人が増えるとともに、民主化で経済的に豊かになった地元の富裕層をターゲットにした飲食店が急増した。
2016年になると、外国人が経営するお洒落系飲食店が目に付くようになる。
民主化とともに流れ込んだ外国人起業家たちが飲食ライセンスを取り、事業を立ち上げたため、同じような時期に開店を迎える店が多かったと推察できる。
こうした中で、ルーフトップバーの流行がヤンゴンにも到達した。
ヤンゴンで最初のルーフトップバーは、2013年オープンの「ヴィスタ」といえるだろう。
4階にあるのでさして高さはないが、ライトアップされたシュエダゴンパゴダを見晴らせるのが人気だ。
「サクラタワー」20階にある「スカイビストロ」はもっと歴史が長いが、こちらは屋内なのでここでは数に入れない。
そして、2015年。
3月にホテル「ノボテルヤンゴンマックス」14階に「ラ・セリエ」が、11月には上述した「サクラタワー」21階にあたる屋上に「ヤンゴンヤンゴン」がオープン。
これらを皮切りに次々に本格的ルーフトップバーが誕生していった。
特に、2016年にオープンした「ザ・ペントハウス」と「アトラス」は、バンコクのバーを思わせる洗練された雰囲気で、在住欧米人を中心に人気を博した。
これらのバーの価格設定は全体に高めで、カクテル2、3杯と軽い食事を楽しむだけで、4000円以上かかることも珍しくない。
低層階の屋内バーの2割増しといった感じだろうか。
こうして、ミャンマーにも到達したルーフトップバーブームだが、ミャンマーには他都市よりも不利な問題がある。
1年の半分近くを占める雨季の雨が激しいのだ。
1日1回程度、短い時間に激しいスコールが降るパターンが多い東南アジアにおいて、ヤンゴンでは激しい雨が長く続くことが多いのだ。
ある年の、ヤンゴンにおける降水量を見てみよう。
最も雨が多い8月は602mm、最も晴れる2月は2mm。
これに対し、タイは9月344mmで1月9mm、ホーチミン9月327mm、2月4mm、クアラルンプール11月334mm、7月134mm。
特にヤンゴンは6月から8月にかけて毎月約550mmを超えており、1度も350mmさえ超えない他都市に比べ、圧倒的な雨の多さがうかがえる。
しかも、ヤンゴンの雨はざっと降ってピタッと止む降り方ではないため、雨季の間、屋根が完全にないルーフトップバーは経営がほとんど成り立たないのだ。
では、ヤンゴンでこのところオープンし続けるルーフトップバーは、雨季の雨をどのようにしのいでいるのだろうか。
経営を乾季のみに絞る、という方法だ。
雨季には長く激しい雨がある反面、乾季は一滴も降らない時期が5ヶ月近く続く。
雨季対策は何もせず、乾季のみの営業で効率的に稼ぐのだ。
昨年、最も人気を集めた「アトラス」はこの方法をとっている。
この場合、雨季の間は雨ざらしになってもよいように、カウンターなどに木材を使用しないなどの方策を採る必要がある。
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