アジアの経済情報を配信する共同通信社のグループ会社NNAが2022年3月25日に公表した企業アンケート調査によると(3月15~18日にアジア太平洋地域の日本人駐在員を対象に実施)、ロシアのウクライナ侵攻により、自社の現地拠点の事業にマイナスの影響が「大いにある」と回答とした駐在員が13.7%が懸念を示し、「少しある」の14%と「今後マイナスの影響が出そう」の50.4%を合わせると8割近くに達しました。
「影響はない」と回答した駐在員は11.5%にとどまりました。
特に、日本企業の進出が多いタイでは、「大いにある」が17.9%、「少しある」が11.6%、「今後マイナスの影響が出そう」が54.7%で、ベトナムでは「大いにある」が20.6%、「少しある」が25%、「今後マイナスの影響が出そう」が41.2%となり、両国では約85%の日本人駐在員が心配の声を上げました。
また、「大いにある」と「少しある」の回答では、業種別では「食品・飲料」が53.3%と唯一半数を超え、「石油・化学・エネルギー」で46.4%、「建設・不動産」で39.3%に達しました。
以上のように、タイやベトナムを中心にASEANへ展開する日本企業の間でも、ウクライナ情勢の行方を危惧する声が高まっています。
筆者周辺に集まる企業担当者たちの声も同じようなもので、例えばASEANでも特にタイとベトナムに積極的に展開する企業担当者は、「ベトナムはロシアと伝統的な友好関係にある。今後ロシアへ経済制裁が強化されることでロシア産のニッケルやアルミニウムが入手困難になる」「ロシアは世界最大の小麦輸出国であり、それが制裁対象となれば価格値上げは避けられない」などと言った悲鳴が聞こえてきます。
しかし、これらの声は、おそらく日本でも同様だと思います。
要は、今日それだけ世界では経済のグローバル化・相互依存化が進んでいて、原油や天然ガスなどロシア産のグローバルシェアを考えれば、それだけ各国に影響が出ているのです。
ロシアによるウクライナ侵攻の長期化は避けられず、その経済への影響は間違いなく長期化します。
1ヶ月後や1年後に事態が収束するなどは、あり得ません。
しかし、長期化だけでなく欧米とロシアの対立がいっそう深まれば、それだけ制裁の対象範囲が拡大し企業への影響も大きくなるでしょう。
そして、タイやベトナムに展開する日本企業は、以下のことに注意が必要です。
今日、日本は米国や欧州と足並みをそろえ、ロシアに対して強い経済制裁を発動していますが、タイやベトナムはその制裁に一切協力していません。
対ロシアを巡っては今後欧米や日本と、タイやベトナムの間では考え方の違いがより表面化する可能性があるということです。
例えば、欧米が一次制裁(欧米各国とロシアとの2国間で繰り広げられる制裁)だけでなく、二次制裁(欧米各国とロシアによる2国間だけでなく、ロシアと取引する第三国の外国企業も制裁対象になる)も強化すれば、ロシア産材料を使うベトナムの日本企業が欧米による制裁に巻き込まれる可能性があります。
既に米中対立では、二次制裁が大きな問題になっていますが、今後はこの問題でも貿易摩擦が拡大する恐れがあります。
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