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インドネシア市民の消費の中心地「ワルン」とは?

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インドネシアは「ワルンの国」である。

ワルンとは、平たく言えば喫茶店+雑貨屋+食料品店÷3のような個人経営の店舗。
アメリカのテレビドラマ『大草原の小さな家』に出てくるオルソンさんの雑貨屋、というたとえはかなり古いか。
『あしたのジョー』の林屋などは、それに近いかもしれない。
要はどの町にも必ずひとつは存在する「地域密着型の商店」だ。

ワルンを語らずして、インドネシアの個人消費は語れない。

どんな地域にも存在する

東ヌサ・トゥンガラ州フローレス島は、決して豊かとはいえない地域である。
インフラ整備も遅れている。

山がちの地形の中で直線道路を敷くには、まずトンネルを作らなければならない。
だが、フローレス島にはそこまでの予算は下りないらしい。
トンネルというものが全くない。
だから車道は急カーブの連続だ。
都市から都市へ行くのに、日光のいろは坂のような道路を何時間も進む。

だがそんな道の只中にも、サービスエリアのような場所がある。
もっとも、「サービスエリア」と呼べるような立派なものではないが。
多少の駐車スペースと、数件のワルンがポツリとあるだけだ。

しかし、ドライバーやバスの乗客にとってはそれがありがたい。
ワルンには必要なものが一通り揃っている。
食べ物、飲み物、雑貨、そして薬品まで。

首都ジャカルタの街角にも、ワルンはもちろん存在する。
労働者にとってのティータイムは、すなわちワルンでの井戸端会議だ。
店の前の長椅子に腰掛け、お茶をすすりながら仲間と談笑する。
インドネシア人にとって、ワルンは生活インフラそのものなのだ。

月収300ドルの感覚

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ここで注目すべきは、「お茶をすすりながら仲間と談笑する」という一文である。

この場合の「お茶」とは、市販のティーパックかインスタントコーヒーである。
ワルンの店主は、それをひとつひとつ客に販売するのだ。
「そんなの当たり前じゃないか」と思われるかもしれないが、突き詰めて考えればこれは「バラ売り」である。
そう、この国では1個数単位のバラ売りが消費の主流形態なのだ。

飲み物だけでなく、たとえば赤ちゃんのためのオムツもバラ売りする。
1枚入りパックというものがワルンに置かれている。
日本ではまず見かけない売り方だ。

必要なときに必要な分を買う。
それがインドネシア人の基本的な考え方である。
いわゆる「大人買い」という発想は、あまり見受けられない。

もちろんアッパーミドルクラス以上の富裕層はまた別だが、インドネシア国民の大多数はワーキングクラスに属する。
彼らに紅茶やオムツを余分に買うほどの可処分所得はない。
ちなみにジャカルタ特別州の最低法定賃金は、まだ月300米ドルに達していない。

インドネシアの飲食・小売市場を観察するためには、「月収300ドルの感覚」を理解することが大前提だ。

労働者の拠り所として

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都市部のワルンの前に、タバコメーカーから派遣されたコンパニオンが立っていることがある。

彼女たちはワルンにやって来る客全員に声をかける。
インドネシアの現大統領は嫌煙家だが、それでも国民の喫煙人口は非常に高い。
そしてタバコは現実問題、個人消費の仕組みを観察する上で絶好の材料である。

昔のマルボロのCMを思い出していただきたい。
荒野の中でカウボーイがコーヒーをすすりながら、仕事の合間に一服する。
そのシーンはアメリカでは「模範的労働者の姿」と見なされていた。
インドネシアでは今でもそうだ。
労働者がタバコを吸うのは当然である、という考えである。

だがインドネシアの労働者とアメリカのカウボーイが違うのは、一服する場所だ。
ワルンに行けばタバコの他にも、庶民の日常生活に必要なものが揃っている。
活力をつけたければコーヒーを飲み、小腹が減ったらインスタント麺を食べる。
彼女とのデートを控えていたら、外野に冷やかされつつ店で整髪料を買う。

インドネシア人とワルンは、切っても切り離せない関係なのだ。

この記事を書いた人(著者情報)

澤田真一

フリーライター、グラップラー。175センチ88キロ。ASEAN経済、テクノロジー関連情報などを各メディアで執筆。

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