2022年1月1日、日本では新年のお祝いムードでしたが、アジアではASEAN10ヶ国と日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、そして中国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が発効しました。
韓国は2月1日からの予定ですが、1月以降、その他の国々の間では関税が一部の品々で撤廃され、今後さらに輸出入製品の関税撤廃が拡大されていく予定です。
当然ながら、関税のハードルが下がれば企業経営上の負担は減りますので、貿易上ASEAN諸国と密接な関係にある日本企業の経営者層は賛同することでしょう。
また、今後ASEAN諸国へ展開を計画・強化しようとする企業にとっても、現時点では輸出入の対象となる材料や完成した製品によりますが、RCEPの誕生は大きな原動力になる可能性があります。
RCEPが実際に運用されることによって、自分たちの製品をもっとASEANや中国に輸出しよう、商品を作るための原材料の調達先を強化しようと考える人々もいることでしょう。
RCEPが日本とASEAN各国の関税のハードルを下げ、相互の経済交流を加速化させる原動力になることは間違いなく、今後大きな期待が寄せられます。
しかし、RCEPの誕生は表面的にはいいことづくしですが、米中対立が経済に大きな振動を与えているように、国際経済(金融や貿易含む)が国際政治、もっと言えば安全保障という問題という前提に成り立っているという現実を軽視してはなりません。
関税が撤廃された・今後撤廃されるという各国に恩恵を与えるような事象において、国際政治的には負の側面を沈黙できないのです。
もっと分かりやすく言うと、ASEAN10ヶ国と日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、中国が参加するRCEPにおいては、各国経済に大きなメリットがある反面、そのメリットを利用することで域内において覇権的な影響力確保を狙う動きも見過ごせません。
先の結論を言うと、中国の動きです。
中国にとって、RCEPはASEAN諸国や日本との輸出入貿易で初めて関税が撤廃される動です。
対外的な影響力を拡大しようと一帯一路構想をコロナ禍でも強化する習政権にとって、RCEPは大きな試金石となる可能性があります。
中国にとって、RCEPは関係が冷え込む米国やカナダ、英国などが参加しない経済的枠組みでありますが、米国陣営に属する日本やオーストラリア、ニュージーランド(韓国は安全保障的には米国陣営だが、日米豪印によるクアッドには接近せず、中国との経済関係を重視する立場なので、ここでは割愛)が存在することから、ASEAN諸国へさらなる経済的接近を試みる可能性が高いと言えます。
これまでラオスやカンボジアは中国のバックヤードと揶揄(やゆ)されてきましたが、RCEPを原動力としてインドネシアやマレーシア、シンガポール、もしくは南シナ海において領有権を争うフィリピン・ベトナムへも経済的接近を図る可能性があるでしょう。
RCEPの誕生は、その多くが良いことかも知れません。
しかし、国際政治的にメリットとデメリットは表裏一体の関係が多く、域内で関税が撤廃されることによってその動向の中でイニシアティブを取ろうとする動きも見え隠れします。
米中という大国間対立が先鋭化する今日においては、RCEPもその中に落とし込んで、冷静かつ客観的にその動向を注視していくという姿勢が重要かと思われます。
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