しかし、QRコードを介した売買というのは他の電子決済よりも遥かに低コストで導入できるものだ。
そのため飲食関連業者も、いざとなればQRコード決済プラットフォームを内製で作る事ができる。
今回はインドネシアで躍進する喫茶チェーン『Fore Coffee』を紹介しよう。
スマートフォンがあれば、飲食店はここまで効率化できるという見本のような店舗でもある。
Fore Coffeeは、スマートフォンを使った電子決済を念頭に置いた喫茶チェーン店である。
専用アプリで各店舗への遠隔オーダーが可能で、更にその会計はFore Coffeeが独自に用意する電子ウォレットで済ませる事ができる。
加えて、Googleマップと連携したデリバリーサービスも提供している。
自社の電子ウォレットがあれば、それを利用したデリバリーサービスを展開する事も容易になる。
なお、電子ウォレットへのチャージはインドネシア国内の大手銀行との連携で対応しているが、2月9日にアプリがアップデートされ、店頭でのチャージも可能になった。
その場合は、利用者側のスマートフォンでQRコードを表示し、レジで読み取ってもらう。
そのような効率化を施すと、商品の単価も当然安くなる。
例えば、エスプレッソは2万8000ルピア(約220円)、アイスラテは3万5000ルピア(約280円)で、スターバックスコーヒー等に比べると、割安と言えるだろう。
インドネシアの喫茶チェーン店市場は、外資が圧倒的な存在感を見せている。
しかし、現地のアッパーミドルクラス以上の人々はともかく、ロウアーミドルやワーキングクラスにとってスターバックスは「割高の店」。
日本人が1杯1,000円のコーヒーと聞けば、高級ホテルのレストランを連想するだろう。
それとほぼ同様の感覚である。
インドネシアでは、そのことを疑問に感じている経営者が少なくない。
そもそもこの国の方針は、「外資<内資<中小零細事業者」であり、中央政府はUMKM(中小零細事業者の略語)の成長を最重要視している。
しかし、喫茶チェーン店市場に関してはその方針が実現されているとは言えず、更に外資系店舗は軒並み高価格設定である。
そのような状況をいかに打破するか、ということが現地経営者にとっての重要課題とも言える。
Fore Coffeeは、加えてインドネシア産コーヒーの消費を公約する。
正確に言えば、インドネシア産コーヒーの積極消費を目的にFore Coffeeは立ち上げられたのだ。
インドネシアはコーヒーの産地なので、自国の農産物を使うことは当たり前ではないかと返されそうだが、実はインドネシアの農業は生産性の低迷に悩まされている。
一次生産者は農法の近代化以前に、生活そのものに困窮している場合が少なくない。
仲買人問題も横たわっている。
農家から仲買人Aが1kg10ドルで買い取り、そこから仲買人Bが25ドルで買い取り、更に仲買人Cが40ドルで……と買い取っていくと、最終的な小売価格が高くなる上、一次生産者も全く儲からない。
そこでFore Coffeeは、生産農家との直接的なフェアトレードでコーヒー豆を仕入れる仕組みを導入している。
豆の焙煎は生産地で行う。
未加工豆よりも売値が高くなるからだ。
そんなFore Coffeeであるが、1月31日にベンチャーキャピタル等から850万ドル(約9億4,400万円)の出資を獲得した。
インドネシアの飲食業界は最近、そのような資金調達の事例が相次いでいる。
例えば、コップの密封で店舗の省スペース化に成功した『Kopi Kenangan』というスタートアップも、昨年10月に800万ドル(約8億8,800万円)規模の出資を各ベンチャーキャピタルから受けた。
2019年は、これらのスタートアップがシリーズA投資ラウンドへ進んでいくはずだ。
そのあたりの動向も見逃せない。
【参考】
Fore Coffee
※インドネシアルピアは0.0079円、アメリカドルは111円にて計算
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