それは選挙だ。
国政議員選挙と大統領選挙が同じ年に行われる。
インドネシアでは、日本のように総理大臣と政権与党が頷けば議会を解散できるということはない。
大統領自身が命を落とさない限りは、5年の任期を必ず全うする。
いずれにせよ、選挙イヤーのインドネシアはちょっとしたお祭り騒ぎだ。
インドネシア国政議会の特徴で挙げられるのは、政党の多さである。
アメリカやイギリスはいわゆる二大政党議会を維持したまま今日まで至っている。
イギリスを例に挙げると、都市部に住む中間層以上の市民は保守党、地方部の労働者は労働党を支持する傾向が見られる。
しかしインドネシアの場合は、たったひとつの党が全議席数の2割を獲得すれば「大勝利」と見なされる。
現在の政権与党である闘争民主党ですらも、前回の国政選挙では560議席のうちの109議席を確保したに過ぎない。
単独政党による国政運営は、この国ではまず起こり得ない。
具体的な選挙結果はどうであれ、必ず連立政権が樹立される仕組みになっている。
そして、太平洋戦争が終わるまでの日本もそうだったが、政党の応援は集落の住民全員で行う。
日本の場合は戦後、GHQの農地改革で農業従事者全員が自作農家になり、それと同時に票田も細分化した。
それに類似した歴史的経緯を持たないインドネシアでは、「集落を挙げた政党応援」をしばしば見かける。
すると、インドネシアの政党応援集会は大型になりがちである。
そこで求められるのが、ケータリングサービスだ。
ひとりふたりという少人数の昼食ではない。
最低でも数十人規模の注文である。
選挙イヤーにはそのような注文が全国各地から相次ぐのだ。
インドネシアに進出する大手ファストフード店は、このような大型の注文を前提にしている。
たとえば日本でもなじみ深いKFCでは、ケータリング分野のオンラインデリバリーサービスを展開している。
数十人分のメニューを車両に搭載して輸送する内容だ。
考えてみれば、KFCのフライドチキンはイベントに出す食事としては丈の合うものかもしれない。
しかも鶏肉だから、イスラム教徒の禁忌にも触れない。
日本では「KFCの稼ぎ時」はクリスマスというイメージだが、インドネシアのKFCにとって稼ぎ時は大型集会が頻発する年である。
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