8月、Googleインドネシアがこのような発表を行った。
同社が提供する無料公共Wi-Fiサービス『Google Station』をインドネシアにも設置するというものだ。
まずは首都ジャカルタにそれを設け、続いてスラバヤ、バンドゥン、デンパサールへも導入するという。
要はジャワ島とバリ島に向けたものである、ということだ。
もはやインドネシアという国は、IT業界にとっての巨大市場と見なされている。
かつて、インドネシアのスマートフォン市場を席巻していたのはBlackBerryだった。
BlackBerryは、インドネシア市民にインターネットというものをもたらした偉大な道具である。
新興国においてパソコンというものは「ホワイトカラーのアイテム」だし、使用も容易とは言い切れない。
BlackBerryはそれらの障害を乗り越えたのだ。
もっとも、だからといって「BlackBerryが安価なガジェット」というわけではない。
現地市民は1年、2年の分割で端末を購入していた。
その状況が大きく変わったきっかけは、2013年。
BlackBerryの提供するメッセンジャーアプリ『BBM』が他のOSにも配信されたという「事件」が起こった。
無論、ここで言う「他のOS」とはAndroidとiOSだ。
だが、iOSが搭載されているiPhoneは世界的に見れば「富裕層のスマホ」である。
ここでは「庶民の味方」AndroidのスマホでBBMが使えるようになったということのみに注目したい。
日本人がLINEを生活インフラにする以前、インドネシア人はすでにBBMを使っていた。
そのBBMがBlackBerryという端末の縛りから脱したということは、代わりにAndroidが台頭するという意味である。
現に、今のインドネシアで時代を謳歌しているのはAndroidだ。
しかも開発者であるGoogleはAndroid自体をオープンにしている分、それを組み込んだ廉価的な機種の開発にも臨める。
そうしたことを許さないAppleなどは、そのためにインドやインドネシアの中央政府から「部品の国内調達率30%の達成」を義務付けられたのだ。
ともかく、以上の経緯でインドネシアのスマホ普及は一気に加速した。
これはひとえに、Googleの功績である。
そのような状況だから、当然SNSも浸透している。
何かしらの業界で知名度を上げた人物ならば、ほぼ全員Instagramを利用していると見て間違いないだろう。
日本の場合はFacebookよりTwitterのユーザーの方が多いという状況だが、インドネシア国民は自分の本名と顔写真をネット上に出すことにあまり抵抗を覚えない人たちである。
この国では、日本以上にハッシュタグ戦略が盛んだ。
街角の広告を見ても、頭に「#」のついた文言がよく記載されている。
幸いなことに、インドネシア語の文章は単純なアルファベットだ。
英語との互換も容易である。
地場系喫茶チェーン店『MAXX Coffee』などは、そうしたプロモーションに力を入れている。
この企業は8月17日のインドネシア独立記念日に合わせ、「#MaxxMerdeka」フォトコンペというものを開催した。
MAXX Coffeeに関する画像か映像をInstagramに投稿し、最も優れた投稿の5名を選出し賞品を送るという内容だ。
こうしたことは、当然ながらSNSの普及なしにはできない。
公共Wi-Fiの増加は、地場系サービス企業にとっても大きな機会をもたらす。
もちろん、日系企業から見てもこれは注目すべき変化である。
表意文字と表音文字を組み合わせる日本語は、Twitterではアルファベット表記の言語と比べておよそ2倍の情報量を140字の中に搭載できるという。
だがその代わり、一企業による大規模なハッシュタグ戦略を展開することが難しい。
その一方でインドネシアは、すでに「ハッシュタグが世を動かす」という状況になりつつある。
それは結局、この国の政府と市民が国際的IT企業を受け入れたからだ。
一時は法人税納付問題を理由に「Googleブロック論」まで出たが、この2、3ヶ月ほどで現地政府とGoogleの関係が一気に良好化した。
Googleにとってのインドネシアは、もはや「身体の一部」と表現すべき国なのかもしれない。
【参考・画像】
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