国際観光都市バンコクで体調不良に襲われた時、何かとお世話になるのが日本語も通じる国際病院。
ホテルのような佇まい、カフェもレストランもそろっており、ちょっとした買い物も。
思わず長期滞在したくなるような印象を持った人も少なくないだろう。
そんな病院事業で最大手にあるのが「バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシーズ(MDMS)」。
通称「バンコク病院グループ」だ。
傘下に「バンコク病院」「サミティヴェート病院」「BNH病院」と3つの大規模国際病院と、国内外50を超える医療施設等を構え、総ベッド数は近く1万にも達しようとする。
今回の財閥研究は日本では見ることのない巨大病院事業財閥を紹介する。
人口1000万人を超えるバンコク首都圏で日本人がひしめき合って暮らすのが、中心部スクンビット通りのプロンポン、トンロー周辺だ。タイに赴任する大半の日本人とその家族が狭いエリアに密集して暮らしている。
そのちょうどど真ん中に位置するのが内科、外科に加えて、小児科、産婦人科なども備えた一大総合病院「サミティヴェート病院」だ。
郊外に小児科専門病院や分院も置くこの病院は全患者のうち約2割が日本人と、まさに日本人患者御用達。
タイにいて、知らぬ人はまずいないというから周知度は推して知るべしと言えよう。
ところが、この病院がMDMSグループの一員だとなると、途端に認知度は低くなる。
バンコクには日本語が当たり前に通じる総合病院が4つあって、そのうちの冒頭に挙げた3つがMDMSグループ傘下にある。
もう一つが、中東からの富裕層の患者が多いことで知られる「バムルンラード病院」。
この4つの病院で、タイの日本人患者のほぼ全てを診ていることになる。
いずれも手厚いサービスと、引けを取らない豪華な作りで知られる病院ばかり。
バンコクにいると、「俺はバンコク病院派だな」「私は小さな子供がいるからサミティヴェート病院」などという会話がよく聞かれるが、開けてみれば同じグループ内ということが少なくない。いざとなればカルテも融通できるのである。
MDMSグループを創業したのは、タイ人の外科医プラサート・プラサートトーンオーソト氏。
現在の「バンコク病院」一院からの出発だった。1969年のことだ。
その後、72年に早くもグループ名を現在のMDMSに改め、新設や買収・合併を進めていった。
現在はグループCEOを務めるプラサート氏の抜きん出た点は、最先端の医療や多国籍言語に対応できるよういち早く設備や通訳を配置した点だ。
これにより、海外からの富裕層を患者に取り込むことに成功した。
現在は進行中の計画も進めると、カンボジアやミャンマー、ラオスなど計約50ヵ所で病院事業を展開している。
年間の総患者数も近く100万人を超える見通しである。
プラサート社長はBDMS株を約20%保有する大株主。
事業の拡大とともに評価額は上昇しており、株式による資産家の側面も持つ。
タイの民間航空会社バンコクエアウェイズのCEOで大株主でもあり、2013年には米経済誌FORBESが発表するタイの株長者番付で首位となった。
ランキングは今も一位を継続中で、後を追う姿は見当たらない。
買収・合併で規模を拡大してきたBDMSだが、近年は老齢医療や予防医療、小児医療などにも力を入れる。
患者のみならず、海外からの医師、技術や設備の導入にも積極的で、時代の先取りを目指す姿勢はどこまでも貪欲だ。
一目する限り、その地位には微塵の隙も感じられない。(写真は、病院のHP、FORBESなどの発表資料から)
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