今回はインドネシアで会社を設立する際の手続きについてご説明します。
インドネシアでは海外からの投資を増やすことを目標に、2018年7月9日に事業用許認可統合電子システム「オンラインシングルサブミッション (以下、OSS)」が正式に導入され、投資の許認可申請がオンラインで行えるようになっています[1] 。
それにより、インドネシアへの投資の許認可手続きが簡素化されました。
外国人がインドネシアで設立できる会社は、株式会社(Perseroan Terbatas =PT.)です。
そして外国資本により設立された法人をPMA (Penanaman Modal Asing)、内資企業をPMDN(Penanaman Modal Dalam Negeri)と呼びます。
1株でも外国人が株を持てばPMAとなります。
会社設立に当たっては、会社の登記、事業基本番号(NIB)の取得、事業許認可の取得、外国人雇用の認可といった手続きが必要となります。
インドネシアで外資の会社設立に伴う許認可取得の手続きは、投資調整庁(BKPM)によるワンストップサービスが適用されます[1]。
ワンストップサービスとは、投資に必要な許認可などの供与権限を有する担当省庁/部署からその権限をBKPMに委任・集中させて、申請から発行までのプロセスを投資家が1カ所で手続きを済ませられる制度です。
旧メカニズムでは必要事項を充足後、各機関から許認可が発行されていましたが、現在はこのOSSで手続きできます。
また、投資のしやすい環境整備のために、2020年11月に公布されたオムニバス法の中でリスクベースの許認可という新しい概念が導入されました。
投資事業のリスクの度合いに応じて、取得すべき許認可が決められるというものです。
その実施令として、2021年2月2日にリスクベースの許認可に関する政令2021年第5号が制定され、その別表に、
・各事業ラインごとのリスク分類
・取得すべき許認可の種類
・許認可取得のために満たすべき要件
・認可を取得した事業者が果たす必要のある義務
などが一覧表の形で整理されています。
進出前に網羅的に検討し、必要な許認可や満たすべき義務を事前に確認しておくことが大切です。
①公証人による定款の作成と証書化、会社設立申請
②法務人権省によって会社設立承認
③OSSを通じNIB取得
④投資事業のリスクレベルに応じた事業認可を取得した後、事業開始
1.会社名を決定し、申請中に他社に使用されることがないよう公証人によって法務人権省にオンラインで会社名の使用権を予約
2.公証人の下で設立証書(定款)を作成
3.会社設立登記:公証人が法務人権省一般法務総局(AHU)のオンライン・システム(SABH)を通じて、会社設立についての法務人権大臣承認書を取得
4.納税番号(NPWP)を税務署から取得
1.OSSに登録してID/パスワードを取得
2.OSSシステム上で事業者データと事業活動計画をインプット、NIBを申請
3.OSSシステムがNIBを発行
※NIBは会社のID、会社登録証(TDP)、輸入業者番号(API) 、通関アクセス権(NIK)としても機能する
NIBが発行される際、事業活動の内容によりOSSシステムが事業活動のリスクレベルを判定し、それにより取得すべき事業許認可が決められます。
低リスク:NIBのみ
低中リスク:NIBおよび事業標準証書(Serifikat Standar。事業者自身が作成)
中高リスク:NIBおよび事業標準証書 (審査によってOSSを通じ発行)
高リスク:事業許可(ビジネスライセンス)
政令2021年第5号の別表では、レストランは、席数によってリスクが分かれています[2]。
・50席未満:低リスク
・50~100席:低中リスク
・101~200席:中高リスク
・200席以上:高リスク
となります。
カフェは低リスク、バーは中高リスクです。
1.OSSでの事業許可の取得
・低中リスクの場合:OSS上で事業標準証書を取得のみ
・中高リスクの場合:環境管理-監視策(UKL-UPL)が義務付けられている事業活動はUKL-UPLフォーム、それ以外の事業活動には環境管理監視能力表明書(SPPL)フォームおよび環境管理能力表明にOSSシステム上で記入し、環境管理能力表明承認を取得した後、政府の審査後、事業標準証書を取得
・高リスクレベルの場合:UKL-UPLが義務付けられている事業活動は、OSSシステム上でUKL-UPLフォームと環境管理能力表明に記入し、環境管理能力表明承認を受けた上で、政府の審査後、事業許可(ビジネスライセンス)を取得
2.建物建設許可(IMB)など許可をOSSで取得
3.銀行口座を開設し、資本金を払い込む
4.他の必要許認可の取得後、事業開始
外国資本企業が外国人を採用するに際して、外国人雇用計画書(RPTKA)の取得が必要となります[3]。
導入当初はOSSで承認となっていましたが、現在は別システムでの許可となっていて、RPTKA申請は労働省にオンライン(TKA Online)で提出し承認されます。
レストランの開業に際し取得する必要のある許認可として、以下があります[4]。
・衛生証明書、観光事業登録証
・酒類を提供する場合は、アルコール商業許可証
・ジャカルタ特別州の場合、多くの人が集まることができる群衆許可証(ジャカルタ警察より取得)
インドネシアでは投資環境の改善の一環として、外国企業を設立する際の手続きが大きく改善される動きが取られていますが、現在はまだ移行期のため、さまざまな試行錯誤の中の運用で、規則の変更が頻繁に出ている状況です。
リスクベースの許認可を反映する新しいOSSシステムが2021年8月9日より運用されましたが、各政府機関システムとの繋ぎ込みなどに不具合が出ているという報告もあり、まだスムーズな事業許可の発行には至っていません。
しかし、早期に事業許可の手続きが固まり、投資の促進に繋がることが期待されています。
【参考】
[1]インドネシア投資調整庁日本事務所「オンラインシングルサブミッションガイドブック」
https://www.asean.or.jp/ja/wp-content/uploads/sites/2/Guide-Book-OSS-2018.pdf
[2]Jaringan Dokumentasi dan Informasi Hukum「DAFTAR PERSYARATAN DAN/ATAU KEWAJIBAN PERIZINAN BERUSAHA SEKTOR PARIWISATA」
https://jdih.pom.go.id/download/file/1307/29._Lampiran_II_Salinan_PP_Nomor_5_Tahun_2021_Sektor_Pariwisata_.pdf
[3]JETRO「インドネシア 外国企業の会社設立手続き・必要書類『外国企業の会社設立手続き・必要書類 』」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/idn/invest_09/pdfs/idn12A010_kaisyasetsuritsu.pdf
[4]JETRO「インドネシア 営業許可【ライセンス名称、所所管省庁・機関、事業関連法(1.外資規制の4.(2))】」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/asean/service_fdi/idn2.pdf
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