バイデン政権の発足から2022年1月でちょうど1年を迎えました。
バイデン大統領は2020年の選挙戦の時からトランプ氏を非難し、トランプ政権下の4年間で狂った米国のネジを巻き戻すかのように脱トランプを強調してきました。
そして、アジア重視政策を強く掲げ、対中国で同盟国や友好国(ASEANでいえばフィリピンやベトナム、インドネシア、マレーシア)と協力していく意思を表明しました。
トランプ時代の米国にはASEAN諸国も悩まされ、どう付き合っていけばいいか分からないとトランプ政権を不安視する声が多く聞かれました。
よって、バイデン政権が誕生した際、多くのASEAN諸国がそれを歓迎し、正直なところ“これで安定した米国との関係に戻る”と安堵した国も多かったと思われます。
しかし、バイデン政権は昨年夏に行われたアフガニスタンからの米軍撤退を巡り、内外から多くの批判を受けました。
支持率は大きく低下し、今年11月に行われる中間選挙で勝利できるか分からない状況に陥っています。
また、昨今はウクライナ情勢に時間を割かれ、発足時に掲げたアジア重視の政策は思うように進んでいません。
それによって、フィリピンやベトナム、インドネシア、マレーシアなどのバイデン政権を見る目は徐々に厳しくなっているように思います。
特に経済で深く中国に依存する国々は、バイデン政権はASEAN重視の戦略を示したのに行動が伴っていないと危惧しています。
コロナ禍にあってASEAN経済が大きく落ち込む中、「ASEANはバイデン政権への期待が高かったが、それは見事に裏切られた」と指摘する筆者に近いインドネシアやベトナムの外交専門家もいます。
バイデン政権が、今後ASEANへの関与を積極的に示す可能性は低いと言えるでしょう。
また、仮に新たに示したとしても、それが実行されるかは甚だ疑問です。
トランプ政権が離脱したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に依然としてバイデン政権は復帰しておらず、今年になって発行したRCEP(地域的な包括的経済連携)協定にも米国は不参加で、今後も中国が経済的影響力を行使しやすい環境と言えるでしょう。
コロナ禍ではあるものの、ASEAN諸国は外国との経済活動再開を強く望んでいます。
チャイナリスクが叫ばれる中、本音では中国との経済関係をこれ以上深めたくないと思っている国もあるでしょうが、自国の経済力維持・発展のためにはやむを得ないという現実がそこにはあり、ASEAN諸国は大きなジレンマを抱えているでしょう。
米中対立が深まるにつれ、インドネシアやベトナムなどは日本と同じように経済的に難しい舵取りを余儀なくされています。
しかし、言い換えればそこに日本企業のビジネスチャンスがあるということです。
“米中対立の中で悩む同士”として、日本がインドネシアやベトナムなどと経済関係をこれまで以上に密にできる可能性があり、日本企業は戦略的に動いていく姿勢が望まれます。
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