東南アジアのハブ国シンガポールでは、ラーメン専門店が大人気。日本から進出したラーメンブランドなども続々と成功を収めている。一方、シンガポールに隣接するマレーシア第二の経済都市ジョホールバルにはラーメン専門店が無いことに目をつけ、昨年からラーメン専門店をジョホールバルで出店し始めたのが、マレーシアの首都クアラルンプールの中華麺店で修業後、マレーシアやシンガポールの高級和食店やホテルのレストランで日本食の料理人として腕を磨いてきた中華系マレーシア人のキャッシュ・フォンさんだ。「福龍ラーメンダイニング(Fukuryu Ramen Dining)」というブランドで、店舗展開している。
昨年1号店を飲食店が集積するステラ地区にオープンし、今年は中華系マレーシア人が多く住むオースティン地区に2店舗目を開店。来年には3店舗のオープンを計画しているというジェイ・フードカルチャー(J Food Culture)のフォンさんを1号店で直撃した。
ー日本と同じ味のラーメンを提供しているのですか。
日本とは気候も違えば、料理の文化も違うから、ローカルの好みに合わせたラーメンを提供している。チャーシューと玉子は、日本のレシピに忠実に調理しているけど、スープは6時間煮込んで仕上げているね。日本のように12時間とか煮込んでしまうと、塩辛すぎる。あと、日本の多くのラーメン店では、化学調味料を使っているけど、うちは化学調味料を使っていない。野菜、昆布、豚肉などの旨みをベースに調理している「NO MSG」の健康に配慮したラーメンが売り。
—人気メニューは。
「チャーシューとんこつラーメン」で、この店では1日につき100杯ほど出ているね。エビラーメンは毎日15〜30杯ぐらい売れている。ロブスターラーメン、車海老ラーメン、ボルケーノ味噌ラーメンも人気があるよ。
それと、黒にんにくのオイルを出そうものなら、コストがかかってしょうがないから、こっちで安価に手に入れやすいエビを使って独自にラーメン用のオイルを開発した。エビは多くの中華系マレーシア人が好きだし、エビのとても良い香りが際立つので大好評だ。コストは黒にんにくのオイルの半分に抑えられるんだ。
麺をすする文化を広めたい! ジョホールバルでラーメン革命を起こすのは、我が社だ!
-自家製麺のようですが麺のこだわりは。
日本のラーメンのトレンドは、硬めの麺だと思うんだけど、うちの麺は柔らかめにしている。麺を柔らかめにしている理由は、僕が固めの麺の食感があまり好きじゃ無いから。それにこっちの人は洋食をよく食べているから、パスタに近い食感の方が食べ慣れているからね。それとマレーシア人は日本人のように麺をすすって食べないんだよ。多くの人は麺を一旦スプーンに乗せて食べる人が多いんだ。だからわざと麺を長くしていて、麺をすすって食べると美味しい、ってことをマレーシアの人たちにも広めていきたいと思っている。
-製麺機などは導入しないんですか。
僕は日本人の料理人の元で修行し、長い年月をかけて日本料理を伝授してもらってきた。その経験から実感しているのは、人材教育が何よりも大切ということ。だからあえて製麺機を使わず、麺を手打ちするところから教えて人材を育てている。ジョホールバルで”ラーメン界のトヨタ”といわれる品質を目指したいと本気で思っているからね。うちの店は、ラーメン1杯16.80リンギット(約430円)からと、アフォーダブルな価格設定。一人でも多くの人に、品質の良いラーメンを提供していくことを目標にしている。
レストラン経営はマーケティングが最も重要!
ー宣伝活動はどうしていますか。
とてもシンプルだよ。店をオープンするときに1回、「TODAY」という新聞に一面広告を出した。この新聞は、シンガポールとマレーシアで毎日無料配布されていて、誰もが知っている新聞。広告を出すのに1回10万リンギットぐらいかかったかな。でも高いとは思わないよ。必要な投資だと思うね。自分の料理に自信があるなら積極的に宣伝しないと。レストラン経営を趣味ではなく実業と捉えているならね。多くの料理人は、独立して自分の店を持つのが夢だけど、いざ独立したら大抵マーケティングが下手なんだ。美味しい料理を提供すれば、宣伝しなくてもお客さんがいっぱい来てくれると信じているけど、それは非現実的すぎると思う。
—広告の効果を感じますか。
広告は、ただ載せるだけでは効果は見えにくいかもしれないけど、僕は、マレーシアとシンガポールで長く日本食の料理人をやってきたから、地元のシェフとのネットワークが強固なんだ。マレーシアでは、シンガポールのテレビ番組も放送されているから、シンガポールのテレビによく出ている料理人はマレーシアでも有名なんだよ。だから、ジャンルの違うシェフがこの広告の中で、うちの店にお墨付きを与えてくれている。これが工夫した点だといえるかな。テレビでなじみのあるセレブリティシェフたちが推薦する店だから、消費者に信頼されやすい。この広告を見た人が、じゃあ一回、行ってみようか、となる。実際に食べてみて気に入れば、口コミやフェイスブック、SNSで広げてくれるんだよ。
—各界のセレブリティシェフの出演料はおいくらほどかかるんですか(笑)。
普通だったら高いだろうね(笑)。でも僕が何年、マレーシアとシンガポールで料理人をやってると思ってるの? もちろんタダだよ。料理人の横のつながりは、絆が強いんだ。皆、オープニングセレモニーにも駆けつけてくれたんだから。
—日本に行ったことはありますか。
まだ無いけど、来年、桜を見にいきたいよ。それに日本には素晴らしいラーメン店がたくさんあるからね。広島のラーメンを食べてみたいし、横浜のラーメン博物館にも行きたい。都会よりかは、田舎に足を運んでみたい。コマーシャライズされた都会より、地方や田舎のほうが、よりオリジナルなものに出会えると思う。
ーシンガポールやクアラルンプールに進出する予定は。
フランチャイズをしたいといったオファーが来れば検討したいとは思うけど、シンガポールは、経済がスローダウンしているし中小企業が勝負するのは不向きで、大手企業が勝てるビジネス環境だと僕は見ている。それに規模を大きくすることを一番優先して考えていないね。それよりも、ジョホール州で地元の人たちに一番愛されるラーメンブランドになりたい。ジョホール州でラーメンといえば「福龍ラーメン」というブランド力を持てるようにしていきたい。来年中に3店舗出したいね。ジョホール州のクライ市と、ジョホールバルのブギインダ地区、タマンモレック地区に出店したい。
ーイスカンダル計画で注目されているジョホールバルですが、発展すると思いますか。
肌感覚としては、10年で様変わりすると思っているよ。シンガポールのようになるかって? うーん、それはなんとも言えないけど、僕の予想では15年後ぐらいかな(笑)。
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