数年間インドネシアに足を運んでいないという人は、今すぐにでも行ってみるべきだろう。
インドネシアは様変わりしている。
スマートフォンが普及し、人々はタクシーをオンラインで手配するようになった。
コンビニやレストランでの支払いも、現金ではなくスマホを使って行う。
そう、この国はスマホの普及から急激に変化したのだ。
2013年、日本の経済界は中国に代わる投資先としてインドネシアに希望を見出していた。
その頃の日本の財界人は、インドネシアに対して「東南アジアのデトロイトになるだろう」という観測をしていた。
現に自動車メーカーは、インドネシアへの増資を惜しまなかった。
しかし、2015年頃からその流れが変わった。
100ドル程度で購入できるAndroidスマホがインドネシア国民の間で普及し、それに伴うアプリビジネスが急増したのだ。
インドネシアはデトロイトではなく、シリコンバレーのような性質を見せるようになった。
今年に入り、インドネシア中央銀行が電子マネーサービスを取り扱う各社に対してQRコード決済の認可を次々に出した。
OVO、OttoPay、Go-Pay、T-CashなどがすでにQRコード決済のサービスを展開しているが、レストランはおろか個人経営の屋台でもこれらのサービスのQRコードを見かけるようになった。
スマホのカメラをかざし、その後店頭で指定された金額を入力すれば決済されるという仕組みだ。
これがある限り、現金を持っている必要はなくなる。
QRコードほど、ロウアーミドルクラス以下の経済階層に属する人々にとってありがたいものはない。
NFC搭載のスマホは比較的値段が高く、ましてやAppleのiPhoneは庶民にとっては高嶺の花。
しかしどのような低価格機種でも、背面カメラは必ずある。
以上の理由から、インドネシアではQRコード決済が市民から大いに受け入れられた。
それと並行し、電子ウォレットという概念を市民の間で普及させることにも成功した。
それはアプリサービスを展開する各社が、電子マネー利用者に対する割引優遇を積極的に打ち出したからだ。
現金支払いよりも大幅な割引が利くとなれば、誰しもが電子ウォレットを持つようになる。
以下の写真をご覧いただきたい。
これは、ジャカルタに所在する高級ショッピングモール『グランド・インドネシア』内に出店している『大阪王将』で撮影したものだ。
この写真から、何を見出せるだろうか。
まずは左側のポスター。
これはギフトカードを取り扱う『TADA』と連携した割引キャンペーンである。
TADAが発行するギフトカードを使えば、餃子1皿無料などのサービスがあるそうだ。
右側のポスターはキャッシュバックアプリ『Cashbac』とのタイアップで、25万ルピア(約1,950円)以上の会計で5万ルピア(約390円)のキャッシュバックが得られるという内容。
いずれも、利用者がスマホを所持しているという前提のキャンペーンである。
なお、TADAもCashbacも現地系スタートアップだ。
もはやインドネシアに進出する外資系飲食企業も、ローカルの電子決済サービスとの連携を求められる時代に突入している。
この国のスマホアプリビジネスは、工業技術先進国であるはずの日本を凌駕している面がある。
2018年11月の時点でインドネシアに流通しているスマホは、RAM2GB・ROM16GBの機種が150万ルピア(約1万1,700円)以下の価格で販売されている。
これだけの性能があれば、QRコード決済を行うアプリを起動させるには何ら支障はない。
先述のTADAやCashbacのアプリも、低価格機種のスペックで十分に扱うことができる。
また、スマホの普及はアプリ開発という新たな産業を創出する効果もある。
この産業はオンライン環境さえあれば場所を問わず、原材料費もかからない。
一介のデベロッパーがカフェかコワーキングスペースの中に籠っていても仕事ができる分野だ。
地方出身のデベロッパーが電子決済アプリを立ち上げ、それをインドネシア全土に普及させる。
会社の規模が大きくなり自社オフィスを構える段取りになった時、ジャカルタではさすがに不動産価格が高い。
そこで敢えて地元を出る選択肢を選ばず、地方発のスタートアップとして活動を続ける。
以上が中央政府の思い描く「構想」である。
現状、インドネシアへの企業進出はジャカルタに集中し過ぎている。
それに起因する地方間格差も大きい。
中央政府はそれを分散させる方向に働きかけているのだ。
インドネシアの経済発展は、スマホ普及と共にある。
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