オンライン配車サービスは、それが転じて軽輸送サービスも行うようになった。
特に食事のオンライン宅配は、インドネシアでの飲食業の在り方すらも変革しようとしている。
それは、不動産価格の高い都市部では顕著である。
例えば、夫婦ふたりで始めた食堂が、数年かけて人気店になった。
幾人かの従業員も雇い、店もより広い物件に移転した。
その後、この店はさらに多くの収益を上げることに成功した。
ここで再び店舗を移転するなり、2号店を作るなり計画するとしよう。
だが不動産価格の高い地域では、それも思うようにいかない。
店自体の集客キャパシティーを拡張したいが、その店の力が及ばない部分で壁に突き当たる。
そこで、現地フードデリバリーサービス『Go-Food』を利用するという選択肢が浮上する。
このGo-Foodに関しては、筆者が以前執筆した記事を参考にしていただければ幸いだ。
今回の記事では、Go-Foodがインドネシア全国の都市で開催している『Go-Food Festival』について解説しよう。
これは、特定の場所に期間限定で設置されるフードコートだ。
いや、集合屋台と言ったほうがより適切か。
いずれにせよ、これらは臨時店舗である。
この記事を書いている2018年12月8日の時点で、Go-Food Festivalは全国14都市で開催されている。
ジャカルタ首都圏はさることながら、パダン、マナド、マカッサルなどジャワ島以外の地方都市でもGo-Food Festivalが開催されている。
出店するのは、Go-Foodと契約を交わす飲食業者だ。
まさに冒頭で書いたような飲食店のブースがずらりと軒を連ねる。
また、パダンならパダンの業者が、マナドならマナドの業者が出店しているということも重要だ。
字面で書けば当然のようにも思えるが、Go-Foodの狙いは「地方の中小零細業者の発展」である。
日本でも昔は国内出稼ぎ労働者が数多く存在した。
出稼ぎ労働のパターンは、大きく分けてふたつある。
東京から石狩や筑豊等の炭鉱、すなわち天然資源の豊富な地域へ行く例。
そして主だった産業のない農村部から東京へ行く例である。
ここで論じるのは後者である。
地方都市の産業創出ということを考えれば、首都圏に人材が流れてしまうのは好ましい事象ではない。
また、己の出身地でそれなりのビジネスを立ち上げることが可能であれば、それに越したことはない。
その上、郷土料理とは立派な産業だ。
パダンの地元飲食店がGo-Foodを利用してその規模を拡大し、ジャカルタに支店を出すということもあり得ない話ではない。
その際に店の売り上げを支えるのは、既にジャカルタにいるパダン出身の出稼ぎ労働者である。
すなわちGo-Foodとは、地方都市の食堂が地域を代表する一大飲食チェーン店に飛躍するための「ジャンプ台」であると表現できるだろう。
また、Go-Food Festivalでは決済手段に『Go-Pay』を導入している。
これはQRコードを使ったキャッシュレス決済で、利用客は終始現金を持たずにGo-Food Festivalを楽しむことができる。
インドネシアの人口は2億6000万人。
そのうちの1億8000万人がスマートフォンを所持しているが、さらにその1億8000万人のうちの8000万人が銀行口座を持っていない。
もちろん彼らは、クレジットカードやデビットカードも所持していない。
しかも、クレジットカードは小規模店舗からあまり歓迎されない決済手段だ。
ある程度大きな額の取引でない限り、カード会社に払う手数料が原因で結果的に損をしてしまう。
そうした煩わしさのない電子マネーという決済手段は、地方都市もしくは農村部において真価を発揮する。
決済の効率化は、取引の安全性と透明性をもたらすからだ。
実店舗を並べるGo-Food Festivalは、地方都市での電子マネー普及を促すきっかけにもなっている。
【参考・動画】
ANTARANEWS – Go-Food Festival di Gelora Bung Karno, Jakarta-YouTube
Berburu Jajanan di Go Food Festival GBK!!-YouTube
GO-FOOD FESTIVAL MANADO 2018-YouTube
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