タイ中部アーントーン県。
古都アユタヤの北隣、人口30万人も満たない小県に、世界最大を誇るというワットムアン(ムアン寺)の座仏がある。
地面からの高さは約93メートル。
その巨大な姿は、遠く隣県一帯からも一望できるほどだ。
しかも、ただ単に大きいだけではない。
大仏が鎮座する〝山麓〟には、悪行から極楽浄土に行けなかった人々が苦行を課された姿を表現した人形が数百体も展示されており、その生々しさを今に伝えている。
バンコクからも2時間ほどで訪ねることができる至近の地。
タイにいるなら知っておいて損はない、巨大大仏と地獄寺のお話――。
高さ93メートルは地上32階建てのビルに相当し、鎮座する大仏の両膝間の幅は約62メートルと、いかに巨大な仏像であるかが分かるだろう。
肩から肘まででも約25メートル、手のひらだけでも約15メートル。
顔もデカい。
顎から額までの長さは約12メートル。
片耳だけでも長さ約4メートルもある。
こんな巨大な大仏が完成したのは、約10年前の2007年2月16日のことだ。
ワットムアンが位置するアーントーン県は、14世紀から約400年間栄えたアユタヤ王朝期、北方と西方の防備の要とされてきた。
域内には運河が無数に広がり、ひとたび戦が起こると、多数の兵士を乗せて敵を追い払いに向かった。
中でも西方のビルマ軍は強大で、たびたび苦杯をなめたほど。
そして、とうとう18世紀後期、ビルマ軍によって滅ぼされるに至った。
このとき、消失したのがワットムアンの仏像だった。
寺は14世紀に建立されたとされ、地域の人々の暮らしと信仰の中心だった。
だが、貧しい生活の中で、戦火で失われた仏像が再建されることはなく、近年まで寺は風雨にさらされる状態が続いていた。
その大仏を再建しようという動きが起こったのは1986年、当地にルアン・ポール・カセーム僧が訪ねてきてからだ。
ルアン・カセームは行政機関に働きかけるとともに、王室や海外の関係者にも協力を打診。
再建資金約1億400百万バーツを集めた。
こうして92年に始まった工事は16年の月日をかけて、この地に世界最大の座仏を復活させた。
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