カンボジア北西部に位置するバッタンバンは、国内3位の人口規模(2012年時点)を誇る地方都市。
国内有数の米どころである他、タイとの国境に比較的近いことから、交易地として栄えてきた街でもあります。
在住日本人は50名未満と言われていますが、日本人経営の飲食店は近年少しずつ増えてきており、ようやく5店舗程。
そんな中、2019年2月にバッタンバン初の日系ラーメン店「Rice Holic」がオープンし、注目を浴びています。
バッタンバンを出店地に選んだ理由は?
自家製の麹を使用したラーメンのこだわりとは?
オーナーであり、バッタンバン唯一の日本人シェフでもある元田 土茂氏(以下、元田氏)にお話を伺いました。
大阪府出身の元田氏は、学生の頃のアルバイト時代から、飲食業一筋。
カンボジアに来る前は、日本とオーストラリアで合計20年以上シェフとして活躍していました。
和食をベースとしながらも、居酒屋、イタリアン&和食のフュージョン料理、高級和食、中華、ベジタリアン料理まで、多様な業態の店舗で腕を振るっていたオーストラリア時代。
ラーメン店として初めて起業したのもオーストラリアで、ゴールドコーストにオープンしました。
麹作り、麹料理のクッキングクラス、麹ワークショップ、ケータリング事業などに従事するかたわら、曜日限定でラーメン店の運営を行っていたのです。
「最初は、フードコートのようなところで週2日営業していましたが、思うように集客ができずに悩んでいました。
すると、以前働いていた店のオーナーが『火曜日はバー営業のみだから、キッチンが空いている。
キッチンを貸すからラーメン店をやってみたら?』と声を掛けてくれたのです」
看板メニューは、旨みラーメン、味噌ラーメン、唐揚げ。
いずれも麹を使ったもの。
オーナーのすすめ通り、週1日のみ店舗を借りて営業する形にしたところ、とても好評だったそう。
「ゴールドコーストのベストラーメン店にランクインし、3時間で100食売れたことがありました。
オーストラリアでは豚骨ラーメンが主流だったので、醤油やみそを使ったラーメンの導入は賭けみたいなところもありましたが、結果として現地の方々に非常に喜んでいただけましたね」
その後、オーストラリアでの永住が難しくなり、日本帰国を考えていたところ、縁あってカンボジアを訪問。
さまざまな条件を考慮した結果、バッタンバンでのラーメン店の出店を決意したといいます。
カンボジアで飲食店を出店する場合、首都プノンペンや観光地シェムリアップが候補地に上がりがちなところ、元田氏があえてバッタンバンを選んだ理由はどこにあるのだろうか?
「私自身、田舎が好きというのはあるのですが、それ以上に大きかったのはバッタンバンが米どころであることですね。
当店の売りである麹を作る原料と環境が整っていたのです」
オーストラリア時代から麹を使ったラーメンを提供してきた元田氏。
「Rice Holic」で提供するラーメンも、自家製の麹をスープに使用したものとなっています。
日本の「国菌」とも言われ、醤油・みそ・酢などの発酵調味料のベースとなる麹。
うま味成分と合わさることで、通常の何倍にもうま味を増す働きがあるだけでなく、麹に含まれる酵素が消化吸収を促進し、胃腸の働きを助けるといった効能からも注目されています。
「オーストラリアにいた頃、高級和食店でさえも、アルコールで麹菌を死滅させた市販のみそを使っていることを知り、残念に思ったのです。
麹菌がきちんと生きているみそを使って調理したいという思いから、妻とともに麹の研究を始めました」
と元田氏。
さらに、大阪の老舗みそ蔵のお墨付きをもらった上で、バッタンバンで麹作りをすることを決めたといいます。
「気温が高いカンボジアは、麹菌が活動する上で最適な環境なのです。
当店では麹から白みそを作っていますが、完成までに日本であれば2〜3ヶ月かかるところが、カンボジアでは2週間でできます。大阪のみそ蔵にカンボジアで作った麹の出来を確認していただいたところ、合格をもらったのです。
たった2週間でできた麹がですよ!すごいですよね!」
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