民族大虐殺の記憶が今もなお残るカンボジアで、日本企業による投資が過去最高に達した。
国内総生産(GDP)成長率が年7%を維持するなどASEAN各国の中でもひときわ高い経済成長に関心が高まっていることを裏付けた格好だ。
今年はさらに市場が活況を見せるものと見られている。
カンボジア開発評議会(議長・フンセン首相)のまとめによると、2016年中にカンボジアの経済特区(SEZ)や工業地区などに投下した日本からの投資総額は、前年比14倍を超える約8億2500万米ドル(約1000億円)。
過去最高を記録したという。
ほとんどが法人税の一部免除など税制上の優遇措置が受けられる「適格投資プロジェクト」に沿ったもので、投資総件数は17件に上った。
今年も拡大していく見通しだ。
このうち首都プノンペンにおける人口知能(AI)開発事業や、大手商業施設イオンモール2号店(プノンペン北郊)の大型投資案件が高い割合を占めている。
イオンモールの1号店(同中心部)は盛況で、貪欲な購買力が消費を支える構図は当分続きそうだ。
隣国タイとの国境に近い北西部バンテイメンチェイ州ポイペトでは、製造業による投資が盛んだ。
「SANCOポイペトSEZ」にある豊田通商が運営する「カンボジア・テクノパーク」は昨年9月に操業を開始。
自動車関連部品などの生産支援体制がスタートした。
これまでに、ワイヤーハーネスメーカーや電子機器製造受託サービス(EMS)会社、金属製輸送機器メーカーなどが入居あるいは入居を検討している。
多くがタイ工場をマザー工場としたサテライト工場としての位置付けで、陸路による経済回廊輸送が本格化し始めた。
日本からのカンボジアへの企業投資は、タイの日系企業が市場の低迷から投資を抑制し始めた2014年以降、2年連続で低迷していたが、昨年後半から持ち直した形だ。
製造業や個人消費の回復を受け、今後は緩やかに拡大を続けるものと見られている。
こうした中、カンボジアへの外国人訪問客も統計史上最多を記録した。
カンボジア観光省によると、昨年一年間の訪問客は前年比5%増の約500万人。
このうち、タイからは約40万人、日本からは約20万人が当地を訪れた。
純粋な観光目的が多いとは見られるが、ビジネス需要も増しているという。
政府は2020年時での訪問客750万人を目標に置いている。
カンボジア国内の産業も活況だ。
GDP成長率は年7%と高い水準が見込まれるほか、建設業への昨年度投資も前年比2.6倍増の85億米ドルに達した。
空港利用者も過去初めてとなる年間700万人を超え、施設の整備も進んでいる。
海運業の伸張も著しく、昨年の取り扱い貨物量はプノンペン港(河川港)とシアヌークビル港(深海港)の2カ所で合わせて700万トン弱を達成。
対前年比二桁近い伸びとなった。
銀行による純利益も最大手のアクレダ銀行で前年比20%を超えるなど金融も好調に推移している。
国際社会も熱い視線を注いでいる。
世界貿易機関(WTO)はこのほど、後発展途上国(LDC)の調整役としてカンボジアを指名。
経済成長著しい同国に、LDCのとりまとめ役としての期待を表明した。
今後40前後の国や地域の調整を踏まえ、高い経済成長を続けていく方針だ。
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