8月になり、台湾情勢で緊張が高まっています。
ペロシ下院議長が8月3日、台湾の蔡英文総統と会談し、米国が台湾を見捨てることはないとの見解を示しました。
米下院議長が台湾を訪問するのは1997年以来25年ぶりですが、米国の事実上ナンバー3が訪問したことに中国はこれまでになく強く反発しています。
ペロシ下院議長が訪台する前、中国は「訪問すれば断固たる対抗措置を取る」とけん制し、台湾周辺での軍事的威嚇を活発化させていました。
米中首脳による電話会談でも習国家主席はバイデン大統領に「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ」と、ペロシ下院議長の台湾訪問に強くクギを刺しました。
しかし、結局ペロシ下院議長は訪台し、中国は泥を塗られる結果となりました。
今後、中国はより強硬な手段に出る可能性が高くなっています。
党トップとして異例の3期目を目指す習主席としても国民に対して強いリーダーシップを示す必要があり、弱気な態度に出られません。
既に、中国は経済制裁やサイバー攻撃などで台湾に圧力を掛けていますが、今後は実際に軍事行動を起こすのかどうかが懸念されます。
これにより、日本やASEANのビジネスにどのような影響が出ると考えられるのでしょうか。
まず、懸念されるのは海上封鎖です。
中国が台湾に攻撃するとなれば、台湾南部の海域の政治的緊張が一気に高まり、中国軍がその海域を封鎖する可能性があります。
そうなれば日本とASEANを結ぶ商船の安定的なルートが脅かされ、迂回を余儀なくする恐れがあります。
また、それ以上に懸念されるのが臨検や拿捕(だほ)です。
今日、台湾情勢の緊張に伴って日中関係の悪化も現実の問題になりつつあることで、日本とASEANを結ぶ商船が台湾南部海域で中国軍によって航行を阻害され、場合によっては臨検や拿捕に遭うリスクが考えられると思います。
そうなれば貿易面へのダメージは避けられないでしょう。
リスクは海だけではありません。
台湾有事となれば、日本とASEANを結ぶ旅客機の飛行にも影響を及ぼします。
ロシアによるウクライナ侵攻によって日本と欧州を結ぶ旅客機は現在ロシア上空を避け、通常より3~4時間長くかかっています。
それと同じように台湾有事となれば、台湾周辺上空は中国軍の支配下になり、迂回ルートを余儀なくされるでしょう。
ビジネスマンの移動に直結します。
さらに、台湾情勢の悪化、海上封鎖、臨検・拿捕といったケースが現実となれば、安定的なビジネスや貿易が阻害され、それによって世界経済が混乱し、ASEAN各国で物価高騰がヒートアップする恐れがあります。
既にロシアによるウクライナ侵攻で小麦や石油など生活必需品の高騰が起こり、ASEAN各国でも影響が出ていますが、台湾有事はそれにさらなる拍車を掛けることになるでしょう。
ASEAN諸国が日本経済にとって安定的な市場であることは、今後も変わりません。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻と台湾有事が、大きな難題となりつつあります。
日本とASEANの間にある台湾の平和は、日本とASEANの経済関係に直結する問題なのです。
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