山田水産株式会社(山田陽一社長)は1973年に大分県佐伯市で創業。豊かな自然と水が残る大分、宮崎、鹿児島を拠点に地域密着型の冷凍餌料、水産加工品に取り組んできた。
1997年には鹿児島県志布志市に養鰻場を建設し、養鰻事業をスタート。当時、水産加工会社は労働賃金の安い中国へ進出する時代であったが、だからこそ、山田社長は「日本の水産加工品が必ず世界で評価される時代が来る。」と判断し、メイドインジャパンにこだわり、焼酎の仕込み水としても使われる霧島山系の地下伏流水が豊富な志布志市有明を養鰻場の地として選定した。今では鰻師(鰻マイスター)として日本の第一人者となった加藤尚武をはじめ選抜された若いスタッフが一丸となって挑戦と失敗を繰り返し、2005年、ついに日本で初めて抗生物質に頼らない「完全無投薬」による鰻養殖に成功した。
更には養鰻場に隣接した敷地に、80mに及ぶ炭火焼のラインから瞬間冷凍し出荷できる最先端の加工場を建設。生産された鰻の蒲焼は大手量販店のブランド商品として採用されるなど量販店を中心に販路を拡大、現在では5つの養鰻場を有し、年間1,000万トンの鰻製品を出荷する日本最大級の養鰻場にまで成長した。
養鰻事業の責任者である山田信太郎専務(以下信太郎)は、2014年バンコク、シンガポールなどを訪問した。バンコクは空前の寿司ブームで、中でも寿司ネタとして鰻はタイ人がサーモンに次いで好む人気メニューとなっていた。しかし、流通している鰻のほとんどは中国産か台湾産。価格も日本産の鰻の1/3~1/4程度となっていた。
「うちの鰻をタイ人に食べてもらいたい!」「うちの鰻なら高価でもタイ人に認めてもらえるはず!」と味と品質に絶対の自信を持っていた信太郎は、早速、タイ大手の食品サプライヤーと商談を繰り返すが、返ってくる答えは「こんな高い値段で売れる筈がない!」「1kg 0000バーツなら扱ってあげてもいいよ。」と厳しい交渉が続いた。
そんな中、インターパントレード社という高級食材を中心に鮮魚や冷凍品を専門に寿司店や日本食レストランへ供給するサプライヤーを紹介された。インターパントレード社は、商品の選定は厳しいが、一旦取り扱った商品は大切にしっかり販売してくれることで定評があった。責任者の小野マネージャー(以下小野)は、信太郎と面談し、山田水産の鰻に賭けてきた情熱や思いを聞き、「素晴らしい商品です。面白い!ぜひ一緒にやりましょう!」とタイでの販売について受諾した。
しかし、小野は早速サンプルを持ち、取引先の寿司店、日本料理店を廻るが反応が芳しくない。それは品質を維持し、長期保存を可能にするために煮沸殺菌、真空加工をした結果、鰻の身の芯までタレが浸透し、味が濃くなってしまったことによるものであった。信太郎は処理法を変えたサンプルを送った。すると厳しかった反応が一転し「美味しい!やっぱり日本の鰻は違う!」「この鰻なら高くてもぜひうちで提供してみたい!」と高評価を得ることが出来た。値段の問題は大きかったが、まず、バンコクで3店舗を展開するタイ人富裕層に人気のローカルの寿司店オーナーが気に入り導入を決めてくれた。
タイでの販売が決定し、信太郎はタイで販売してくれるインターパントレード社や取り扱い店が売りやすいよう、一般消費者向けにタイで導入を決めた鰻の蒲焼ブランド「鰻師の蒲焼」の認知度UPに乗り出した。
ちょうど、山田水産のある大分県の立命館アジア太平洋大学に当時インスタグラムで70万人のフォローワーを持つタイ人女性アイドルのピンタが通学していることを知った信太郎は、ピンタ側と交渉し「鰻師の蒲焼」をタイで導入する上でのキャラクターとして採用した。ピンタ自身も山田水産の直営レストラン「さくら亭」を訪れ「鰻師の蒲焼」を使ったひつまびしや鰻太巻きを食べ、その美味しさを絶賛。インスタグラムで何度も「鰻師の蒲焼」について投稿してくれた。(ちなみにピンタは2015年2月にタイに帰国後、ユニクロのモデルや明治乳業のCMキャラクターとして採用されるなど若手No.1のアイドルとなり、現在ではインスタグラムのフォローワー180万人に達している。)
また、2015年1月にはサイアムパラゴンで開催されたJAPAN EXPOに出展。「鰻師の蒲焼」「さんまの蒲焼」を使った寿司、う巻きなどの試食を実施、50mに及ぶ長蛇の列が出来、3日間で3,200食を来場者に振る舞い、好感触を得た。そのような努力が実を結び、2014年11月末に開設した山田水産タイランドのフェイスブックのファンページも2カ月間で登録数が23,000人に跳ね上がった。
2015年5月には取り扱い店舗の拡大のため、東南アジア最大の食の祭典THAIFEX 2015に出展した。その後の営業フォローもあり「鰻師の蒲焼」「さんまの蒲焼」を扱う店舗は、最高級ホテルのレストラン、寿司店、日本料理店、居酒屋など、バンコク都内を中心に約30店舗へ拡大した。取り扱い店舗に対しても、POPやポスターの提供、キャンペーンの協力、メニューの撮影と写真の提供、Facebookでの宣伝、紹介などお店の販売を積極的にサポートした。
最初に導入を決定してくれた寿司店では、全店で「鰻師の蒲焼」のA1ポスターを貼り出し、店舗でビデオを終日流し続けてくれている。ある最高級ホテルのレストランでは、今まで使っていた台湾産の鰻の蒲焼を通常のメニュー、「鰻師の蒲焼」を特上のメニューで取り入れたが、両方食べたお客様がその後は値段が高くても「鰻師の蒲焼」を使った特上メニューを食べてくれているという評価を料理長から受けた。新しくオープンしたとんかつ店では、鰻をとんかつに次ぐ準メインメニューとして採用したが、全メニュー比率でひつまぶしが10%を超える人気ぶりとなっている。人気の居酒屋チェーンでは1店舗で試験導入したが、お客様からの評判がいいため10店店舗ある全店へ導入するに至っている。
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