インドネシア政府が「国の課題」として取り組んでいることがある。
それは「税金の徴収」だ。
そんなの当たり前だろう、と言われるかもしれないが、決して当たり前ではない。
とくに法人税などは、「国家VS企業」という構図が成立しているほど税逃れ行為が頻繁に行われている。
これを引き締めなければ、という声を受けてインドネシア政府はついに動き出した。
その対象となったのは、世界的IT企業である。
今や小学生ですらも社名を知っているIT企業は、ほとんど必ずと言っていいほどアイルランドやルクセンブルク、イギリス領バミューダなどに子会社を設立している。
理由は法人税の安さだ。
これらの国と地域は法人税率がゼロか、限りなくそれに近い。
ここに会社を設け、対外進出の足場にすれば各国政府からの法人税納付の要求を跳ね除けることができるというわけだ。
「パナマ文書」は我々日本人の記憶に新しいところだ。
なぜ大企業がパナマにトンネル会社を設立するかというと、法人税の課税対象が「パナマ国内での経済活動」に限定されているからだ。
いわゆる「税の領土主義」というものだが、こうした体制の国は当然ながら少数派である。
日本を含めた地球上の大半の国は「税の全世界主義」を採用している。
もちろん、インドネシアも全世界主義の国。
だからこそ、大企業による税逃れ行為が多発しているというわけだ。
パナマ文書はインドネシアにも大きな衝撃を与えた。
国内の有力企業とその経営者が幾人も、リストに名を連ねていたからだ。
それを受け、インドネシア政府は「タックス・アムネスティ法」の成立と、それに伴うキャンペーンを始めた。
期限内に国外の資産を申告をすれば、追徴課税などを免除するという取り組みだ。
平たく言えば、「隠している財産の額を残らず白状しろ」ということである。
それと同時に、法人税を支払わない企業に対しては強硬策に打って出た。
Google、Facebookなどに対して現地法人を設立することと、それがなければコンテンツをブロックするという警告を発したのだ。
もっとも、実際はよりソフトな言い回しである。
情報通信省は「Googleのブロックはあくまでも最終手段であり、我々はGoogleに様々な協力をしていきたい」とコメントしたが、つまるところその意味合いは警告以外の何物でもない。
そしてこの問題が一応の解決を見たのは、今年6月。
Googleとインドネシア政府との間で、支払うべき法人税の額が話し合いにより決定されたのだ。
ちなみにそれとまったく同じタイミングで、Facebookのインドネシア法人設立が投資調整庁から発表された。
インドネシア政府の基本姿勢として、「駐在員事務所に好意的でない」というものがある。
いや、それは語弊があるか。
「法人化を催促する」と表現したほうが、より的確かもしれない。
駐在員事務所という形の拠点からは、法人税を徴収することができないからだ。
もちろん法律では駐在員事務所の設置が認められており、進出初期の段階ではオフィスを法人格にしないというのが外資系企業の「セオリー」である。
だが、現地でのビジネスが軌道に乗った暁にはぜひ法人を設立してほしい。
そうでなければ、貴社に対して様々な規制や追徴を課さざるを得ないだろう。
インドネシア政府は、結局のところそう言っているのだ。
そしてその構図が当てはまるのは、インターネット環境さえあれば世界のどこでも同質の仕事ができるIT分野である。
先述の「国家VS企業」という表現は、インターネット社会に対して一国がどのように対応するかという意味も含まれている。
この問題は、非常に根が深い。
今後の動向にも注目すべきである。
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