2018年10月。
外国人や現地富裕層が多く住み、観光客向けのホテルも立ち並ぶプノンペンのボンケンコンエリアに「Boston Pizza & Bar」がオープンしました。
オープンから1ヶ月余り(取材時点)で西洋人コミュニティをはじめとする多様な層を取り込み、口コミなどで評判が広まっているこちらのお店。
なぜボストンを推しているのか?
ピザを提供する店舗は決して少なくないプノンペンで、なぜ今ピザレストランの開業に至ったのか?
共同オーナーのMap Phin氏(以下、Phin氏)にお話を伺うことができました。
カンボジア西部の都市バッタンバンで生まれたPhin氏は、1983年に内戦を逃れて家族とともにアメリカ・オハイオ州のコロンバスへ。
現地の小学校、中学・高校を卒業し、カレッジ在学中から自身で複数のビジネスを立ち上げました。
最近では中古車販売事業に従事していましたが、事業を整理し、約1年前に故郷であるカンボジアに戻ってきました。
人生の大半をアメリカで過ごしたPhin氏。
カンボジアの市場環境やトレンドについて入念にリサーチした上で、本格的にカンボジアへの移住と現地での起業を決意したといいます。
カンボジアは、アメリカに比べてあらゆる制度や仕組みがシンプルで、起業に適した環境であると感じたそうです。
「Boston Pizza & Bar」オープンに先立つ2018年4月には、アメリカで理容経験のあるパートナーとともに、プノンペン市内に理容室「Import Cuts」をオープン。
バーやレクリエーションスペースなどを併設した居心地のよい空間を作り出し、近隣のアフリカ系コミュニティを中心とする外国人層から好評を得ているとのことです。
「Boston Pizza & Bar」開業のきっかけになったのは、現在の物件で飲食店を営んでいた女性と知り合ったこと。
個人的な事情により、彼女が店舗を手放す予定であることを知ったPhin氏は、同物件を譲り受けることにしました。
その時はどのようなビジネスを行うかは未定でしたが、アメリカ時代からの旧友で、後に共同オーナーとなるTee Chan氏と話合った末に、ピザをメインに提供する飲食店の開業を決断したといいます。
「私は基本的に食べることが大好きです。
アメリカ時代にも、美味しい店や新しい店には常にアンテナを張っていて、とにかく色々試しました。
時にはパートナーのTeeも一緒に。
それが、1年余り前にカンボジアに来た時、正直かなりがっかりしたのです。
たくさんのピザを食べたのですが、求めているものに出会うことができませんでした。
値段の割にサイズが小さかったり、生地が甘すぎたり。
アメリカで親しんでいた美味しいピザとはまったく異なるものだったのですよね。」
当時の失望がきっかけとなり、「プノンペンで正真正銘のアメリカンピザを食べられる店を自分達でやろう!」とChan氏と意気投合し、「Boston Pizza & Bar」の開業に至ったそう。
「コンセプト、メニュー、内外装などはすべて、TeeやJimmy達とともに作りました。
Jimmyはピザのプロフェッショナルで、1月から本格的に参画することになっています。
とても素晴らしいチームと一緒に仕事をしています。」
店内に踏み入れると、そこはボストンカラー一色。
壁にはボストンを代表するスポーツチーム「ボストン・レッドソックス」「ボストン・セルティックス」「ニューイングランド・ペイトリオッツ」のユニフォームなどが掲げられており、スポーツファンなら目が釘付けになってしまいそうです。
ボストンを前面に打ち出す店名とコンセプトには相当こだわったというPhin氏。
「店名は、とにかくキャッチーなものにしたいと考えていたのですが、近隣にボストンから戻ったカンボジア系アメリカ人の大きなコミュニティがあることに注目しました。
彼らがボストンを懐かしんで来てくれるような場で、“ボストンピザ”という名称でアメリカンスタイルのピザを提供したらどうだろう?と考えたのです。
私自身、ボストンからほど近いコロンバスで育ち、アメフトチームの「ニューイングランド・ペイトリオッツ」の大ファンです。
パートナーのTeeはボストンに住んでいたこともあったので、ボストンは私達にとっても非常に身近な場所なのです。」
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