近年、ミャンマーは開放経済を武器に諸外国からの投資や企業進出が増加し、日系飲食産業も積極的に進出しています。
2017年には、日本の双日がミャンマーの小売業の最大手であるシティ・マート・グループと共同で外食事業を開始しました。
また、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」や鳥料理専門居酒屋「てけてけ」、ラーメン店「九州筑豊ラーメン山小屋」などの飲食企業も進出しており、ミャンマーは新たな経済フロンティアとして注目されています。
しかし、2021年2月、そのミャンマー情勢が一変する出来事が起こりました。
ミャンマー国軍が突然クーデターを起こし、民主政権が崩壊したのです。
その後、国軍が実権を握ってミャンマー国内を統治していますが、それに抗議する市民によるデモがヤンゴンなど各地で発生し、治安当局との衝突で多くの死傷者が出る事態となりました。
また、治安が悪化することで電車やバスといった公共交通機関が麻痺し、急激な物価上昇が起こるなど混乱が広がりました。
欧米各国が国軍政権に対して経済制裁を次々に発動するなど、以前の魅力的なミャンマー経済は影を潜めるように。
それによって、日本企業の撤退も相次いでいます。
2021年2月、ビール大手のキリンホールディングスは市民への弾圧を続けるミャンマー国軍系企業との合弁解消を発表し、2022年2月にミャンマー国軍系企業と合弁で展開する会社を売却することを決め、2015年から進出してきたミャンマー市場から撤退することを発表した。
また、石油元売り大手のENEOSホールディングスも2022年5月にミャンマーで手掛けている天然ガス事業から撤退すると発表しました。
今日では抗議デモや衝突は少なくなったものの、それが再発するリスクは残っており、今後治安が悪化する可能性も排除できない状況です。
最近ではミャンマー軍事政権が民主化活動家4人の死刑を執行したと発表した2022年7月25日以降、ヤンゴンや第二の都市・マンダレーでは、反軍事的な武装勢力による国軍・警察を狙った報復攻撃を阻止するために厳戒警備態勢が敷かれるなど緊張が続いています。
また、外交面でもミャンマーを取り巻く情勢は日本企業にとって明るい展望が見えません。
欧米が経済制裁を強化する中、ミャンマー国軍は孤立を回避するため、中国やロシアへの接近を図っています。
最近もミャンマー国軍総司令官がロシアを訪問し、軍事や原子力分野での協力強化を話し合ったとみられ、国軍は中国やロシアからの投資を呼び込む狙いもあるようです。
以上のような最近のミャンマー情勢は、日系飲食企業が積極的に進出してきたときとは状況が大きく違います。
依然として軍事政権が権力を掌握し、国営企業と関係を持つ外資企業に対して市民の不満が高まっているとも言われています。
米中対立やロシアによるウクライナ侵攻に注目が集まる中、そろそろミャンマー情勢は落ち着いてきたと事業の再開を図ろうとする企業もあるかと思いますが、今後の情勢も日本企業にとっては注視するべきということを把握しておくべきでしょう。
メインメニュー
教えてASEANコラム
お問い合わせ
人気記事ランキング
新着記事
国別で記事を探す
おすすめキーワードで記事を探す
ライター紹介