今も昔も、そして未来も日本にとってASEANが重要な市場であることは変わりません。
しかし、流動化する国際情勢の視点から、今後日本にとってのASEANの重要性はもっと上がることが予想されます。
今日の米中対立や台湾情勢、ロシアによるウクライナ侵攻などはその動きをさらに助長させる可能性があります。
21世紀に入り、中国は高い経済成長を続け、経済力や政治力、軍事力などで大国化し国家としての自信を付けています。
そして、今日の中国はそれに留まらず、いつか国力で米国を追い抜くという国家目標を掲げています。
一方、米国もそれに強い懸念を示し、中国を国際秩序を変える意図と能力を持つ唯一の競争相手と位置付け、安全保障や経済、宇宙、サイバー、そして科学技術などあらゆるドメインで対応する姿勢を打ち出しています。
そのような中、今後の日中関係では台湾情勢が大きなポイントになりつつあります。
8月はじめ、米国ナンバー3とも言われる米国のペロシ米下院議長が台湾を訪問したことで、中国はこれまでになく台湾や米国に対して軍事的威嚇を強めています。
そして、偶発的衝突によって一気に緊張が高まることが懸念されていますが、日本は米国の軍事同盟国である以上、有事の際には必然として中国と対立関係になり、それによって日中関係が冷え込む恐れがあります。
実際、そういった懸念を持つ企業が増えています。
日本にとって中国が最大の貿易相手であることは変わりませんが、今後の中国リスクを見極め、代替先としてベトナムやタイ、インドネシア、フィリピンを模索する動きが少なからず見られます。
中国に進出する日本企業の動きは鈍化しています。
筆者の周辺でも、飲食業界を含め複数の企業で「中国は全体主義国家であり、新型コロナ拡大に伴うゼロコロナ政策など、共産党政府の1つの決断によって経済活動が一瞬のうちにできなくなる」など不安の声が聞かれ、「日中関係が悪化すれば現地の日本企業の活動が意図的に大きく制限される」「全体主義ではないインドネシアに比重を移そうと考えている」との懸念も聞かれます。
そうなれば、ASEANにおいて飲食業界を含む日本企業間の競争が激しくなるかもしれません。
また、既にASEANに進出している日本企業にも影響は出そうです。
例えば、ASEAN各国に進出している日本企業の中には、いくつかの材料(穀物や部品など)の調達先として中国と関わりを持っている企業が少なくないでしょう。
日中関係が悪化すれば、ASEANに展開している日本企業と現地の中国企業との間でも摩擦が生じ、中国から物品を調達することが難しくなるケースが想定されます。
日中関係が悪化すれば、日本企業のASEAN進出・競争がいっそう激しくなるだけでなく、飲食業界では一部の材料を中国から輸入することが難しくなるなど、さまざまな影響が出てくることが懸念されます。
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