ダナンに自社工場を構える「Chef Meat Vietnam(シェフミートベトナム)」は、輸出基準の養豚会社から原料を仕入れ、安心・安全を第一に高品質なスライス精肉やハム、ソーセージなどをホーチミン、ハノイ、ダナンの5つ星リゾートや有名店等に販売しております。
また、和牛のライセンスもベトナム1号で取得しており、和牛の輸入も行なっています。
今回は「シェフミートベトナム」の日本人責任者、井村さんにお話を伺いました。
記者:ベトナム進出までの簡単な経歴を教えてください。
井村氏:以前は、東南アジアの農業に関連したいくつかの政府関係のODAプロジェクトや半民プロジェクトに参加していました。
その間に、アジアからの農産物は二次加工をしないとなかなか価値が出せないことをプロジェクトを通して感じました。
妻は東南アジアに80ヘクタールの農地を所有していたので、そこで飼育していた豚でベーコンを作りたいと思い始めました。
そんな時、高校の同級生からベトナムへの和牛輸出のことで相談を受けたのが「シェフミート」との出会いでした。
会社を訪問した際に試食させてもらったベーコンが、今まで食べたベーコンと比べようがない美味しさだったので、私もベトナム進出事業に携わることにしました。
まず、食肉の加工について、伊藤ハムで高級品の開発を行っていた武部さんという素晴らしい師匠から学ばせていただきました。
その期間はとにかくいろいろなことを覚えたかったので、日の出前に家を出て、夜は寝に帰るだけという生活を送り、肌は真っ白になりました。
武部さんと過ごした時間が全てのベースとなり、今の私を支えてくれています。
その後ベトナム・ダナンに転勤してから4年目となります。
記者:ベトナム進出前に準備したことは何ですか?
井村氏:高校を出てから大学も仕事も海外だったので、海外に住むことに抵抗はありませんでした。
ただ、私は心配性なので、自分の知識や経験で工場長が務まるのか心配で、肉の勉強は常にしていました。
日本語では限られた量の情報しか得られなかったので、海外の大学や機関のレポートなどから日本とは違った情報も集めました。
本から得た知識だけでは現場で通用しませんが、情報が沢山あればあるほど可能性は広がるので後々役に立ちました。
記者:どの様なお客様がいらっしゃいますか?
井村氏:35%が日系企業、65%がベトナム企業です。
記者:ベトナムで苦労したこと、大変なことは何ですか?
井村氏:創業してから始めの1年半が一番苦労しました。
血縁関係のスタッフが多い為、会社の指示を聞かないという大きな問題がありました。
また、工場の構造的に使い勝手が悪く、それによって作業効率が悪くなるなどの問題も。
私も製造業を経験するのは初めてで、ランニング、ハード、様々な面で課題が山積みでした。
正直、このままいけば倒産すると思っていた中で、2年目に会社が資金ショートしました。
元々ベトナムで現地責任者になるつもりはありませんでしたが、そのとき初めて「いまさら無理かもしれないができる限りの事をしよう」という気持ちになりました。
このまま終わりにしたくない、頑張ってるスタッフの苦労を無駄にしたくない、師匠から受け継いだ味をなくしたくない、ベトナム工場の生産を経験のない私に任せてくれたシェフミートに対して恩を返したいと思い、引き受けることにしました。
まず、どうして赤字なのか?何が問題なのか?どうしたら商品に付加価値をつけられるか?などを調べました。
また、若い人間が責任者になるからには、短期間でだれの目からも違いが分かるように見せていかないと従業員の不安をさらに増長させます。
そのため、放置されていた色々な問題の中でも、目立つ問題や解決できないと判断されていた問題に対して、私自身がまず解決する姿勢を見せることにしました。
製品に関しても「シェフミート」のブランド作りとして、衛生面を第一の改善点とし、品質に関してはダナンの高級レストランなどに納品することで「ほとんどの良いレストランにはシェフミートの商品が入っている」という状態を作るようにしました。
食の安全に関しては、自分の子供に食べさせても不安のない製品づくりを心がけ、その一環で幼稚園の子供や親に対して、生肉などの製品はどのような事に気をつけなくてはいけないのかを保護者会などで説明したりしました。
園児達に楽しくソーセージを作ってもらい、美味しい味を知ってもらおうとソーセージ教室なども開いています。
昨年はそういった取り組みを評価してもらえたのか、APECの際に日本政府から注文をもらい、製品を納品させていただきました。
とても嬉しかったので、すぐに私の師匠に電話しました。
ただ、何か間違いがあっては大変だと思い、日本政府の方々が泊まっているホテルの厨房で皿の盛り付けが終わるところまで、シェフたちと一緒に料理しました。
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