順風満帆にも見えるMiller氏の活躍ですが、ここに至るまでには、途上国でビジネスを行う上での苦労も少なからず経験されています。
カンボジアで飲食店を経営する上で難しいと感じる点について、お話頂きました。
「まず、サプライチェーンが整っていないので、メニューの検討には手間がかかります。
作りたいものと入手可能な材料との狭間で悩むことはありますね。
例えば、高品質な鮮魚を輸入したいと思った場合、国によってはサプライヤーを通じて毎日入手することも可能かもしれませんが、カンボジアではまだそれが難しい。
実現できないことはないですが、プラスアルファの時間とエネルギー、時にはお金が必要となってくることを頭に入れておかないといけません。
人件費は安いですが、その分経験が浅い人材も多いので、きちんとトレーニングが必要です。
また、カンボジアの場合、乾季のハイシーズンと雨季のローシーズンによる入客状況の波に対応することが必要になってきます。
例えば、店舗の営業時間については“ローシーズンアワー”といったものを設け、入客が少ない時期には余剰稼働を減らすというのも一つの工夫ですね。
他にも、インターネットスピードが遅いなど、カンボジアに限らず途上国全般に言える課題は色々とあります。
先進国での当たり前はここでは当たり前ではないので、こういったことについては、私達の期待水準を現地の水準に合わせていくしかないですね。」
さらに、カンボジアで飲食業を始める場合に気になる人材、工事、プロモーションに関する留意点についてもお聞きしました。
「従業員には長く働いてもらいたいので、市場相場より高めの給与額を支給するように努めています。
給与に満足している従業員には長く働いてもらえる傾向がありますが、満足していない者は、常にもっとよい待遇の職を探すような状態になり、すぐに辞めてしまいます。
彼らにすぐ辞められてしまうと、新たに人材を採用・育成をする時間とコストがかかりますので、こちらにとってもリスクです。
現在、ばらつきはあるものの、平均すると$250程度の月給を支給しています。
ほとんどの従業員は英語を話せるので、コミュニケーションの問題は感じていません。
ただ、食品安全、衛生、接客といった各点において、こちらが求める水準を伝えて理解してもらうのが難しいと感じます。
一定以上のクオリティの飲食店で食事をする機会がある先進国では、たとえ飲食業で働いたことがない人でも、最低限守るべき水準を理解していることが多いと思います。
一方、低賃金で働く人が多いカンボジアでは、外食と言っても、屋台のプラスチック椅子に座って1食$1.00前後のご飯を食べる程度です。
一流のサービスに触れる機会がない彼らにとっては、私達が考える期待水準をそのまま要求しても理解が難しいことがあります。
全く新しい考え方を伝えていかなければならないという点で苦労はあります。
ただ、こちらが誠意を持って伝えれば、皆喜んで他国の水準を学ぼうとする姿勢を持っていると思います。」
「初期費用を抑えるため、店舗のデザイン・設計はいつも自分で行なっています。
私がプロジェクトマネージャーとなり、工事はローカルのワーカーの人々にお願いしています。
ワーカーチームの責任者に依頼すると、彼が都度メンバーを集めてくれます。
「Atlas Grill House」の物件は元々倉庫だったのですが、薄いトタン屋根に穴だらけの床と酷い状態だったので、全部壊して作り直しました。
ペンキやタイルなども自分で買いに行き、テーブルや椅子のデザインも自分でしましたよ。
壁のペイントは、イギリス人のアーティストにお願いしました。
施工業者選定時には、見積額が高すぎる業者もいけませんが、安すぎると問題が多いので、中間の価格帯のところを選ぶとよいと思います。
既にこの地でビジネスをしている人に状況を聞くとよいですね。」
「カンボジアでビジネスをする上では、Facebookの活用がマストです。
Facebookはカンボジアに住む人々の主要な情報源なので、宣伝はFacebook経由がもっとも効果的ですね。
うちにはインハウスのグラフィックデザイナー兼マーケティング担当者がいますので、その者が3店舗分のオリジナルGIFアニメーションを作り、毎日各店舗のFacebookページに投稿し、ページ内での訴求を常に行うようにしています。」
Miller氏に今後の店舗展開について伺うと、「Dos Besos Mexican Restaurant」はまもなく、現店舗と同じ通りの20〜30m程離れた場所に移転予定で、空いた場所に4店舗目をオープンする予定とのこと。
4店舗目の業態については未定ということですが、日本人のパートナーが見つかれば寿司屋にすることも検討中だそうです。
その場合、世界各地で愛されるロール寿司を主体とした業態を想定しているとのことですが、既にコンセプトやメニューについてもユニークなアイディアを温めているそう。
最後に、これからカンボジアで飲食店の開業を目指す方へのアドバイスを頂きました。
「まず、焦って色々なことを急ぎすぎないように、と言いたいですね。
周りの飲食店オーナーに話を聞くことを躊躇せず、慎重にリサーチをしながら進めるべきだと思います。
中には、新規参入者をライバル視して閉鎖的になってしまうオーナーもいるとは思いますが、多くのオーナーはもっと広い視野を持っているはずです。
私自身は、いつも喜んで他の人を助けたいと思っていますよ。
なぜなら、私の店舗のあるトゥールトンポンエリアがもっと盛り上がるとよいと思っているので。
お客様にしても、私の店の料理を毎日食べたいとは思わないはずです。
それでも、もし同じ通りに日本食、インディアン、ウエスタン、イタリアン、メキシカンなど、色々な食を楽しめる店があったら、この場所にもっと頻繁に足を運んでくれるようになると思うのです。
私は物事を勝ち負けで考えるのが好きではありません。
波が高くなるとすべてのボートが一緒に浮き上がるように、成長する時には皆一緒に成長していけるものだと思っています。」
立ち入った話まで快くお話してくださったMiller氏。
4店舗目として検討中の寿司業態については、共に展開を図れる日本人パートナーを募集中とのことです。
ご興味がある方は、この機会にぜひご検討ください。
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■Atlas Grill House
【住所】No.42, St.123, Phnom Penh
【電話】099 260 360
【定休日】なし
【営業時間】11:00〜22:00
【Facebookページ】https://www.facebook.com/atlasgrillhouse/
■Dos Besos Mexican Restaurant
【住所】No.33, St.123, Phnom Penh
【電話】077 977 016
【定休日】なし
【営業時間】月〜金・・・11:00〜14:30 17:00〜22:00、 土・日・・・11:00〜22:00
【Facebookページ】https://www.facebook.com/dosbesosmex/
■Brooklyn Pizza+Bistro Delivery
【住所】No.36, St. 113, Phnom Penh
【電話】089 925 926
【定休日】なし
【営業時間】11:00〜21:45
【Facebookページ】https://www.facebook.com/brooklynpizzadelivery/
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