ユジュムはその生涯を「ナシグドゥ食堂の女店主」として貫いた。
2016年11月、ユジュムは85年の人生を全うする。
この頃になると、Gudeg Yu Djumはジョグジャカルタでは有名店になっていた。
チェーン店舗もいくつか構えるようになり、ユジュムの肖像写真が店のアイコンとして市民に認識されていた。
しかし、Gudeg Yu Djumの大躍進は創業者の死後に訪れる。インドネシアの首都ジャカルタには、全国各地から上京してきた多くの出稼ぎ労働者が生活していて、彼らは自分の故郷の味に飢えている。
ジョグジャカルタでは有名店とはいえ、そこを一歩出ればGudeg Yu Djumは地方の中小飲食店事業者に過ぎない。
そこで、Gudeg Yu Djumはオンライン配車サービスGo-JekとGrabに目を付けた。
この両サービスは、飲食デリバリーも行っている。
事業者としてはデリバリー業務をアウトソーシングできる上、オンラインでの注文管理やプロモーションを配車サービス側が行ってくれるありがたい存在。
Go-JekはGo-Foodを運営し、大型ショッピングモールでの臨時店舗設置キャンペーンに力を入れている。
一方でGrabは、半径7km圏内での配達を行うKitchen by Grabfoodというフードコートを西ジャカルタのケドヤ地区に設け、より迅速な対応ができるフードデリバリーを目指した。
Gudeg Yu Djumはこれを足掛かりにしたのだ。
オンライン配車サービスを活用する戦略は功を奏し、Go-Jekからはベストパートナー賞が授与された。
新聞やWebメディアでも、Gudeg Yu Djumの扱いが格段に大きくなった。
故郷の味をスマホアプリで注文できるのだから、特に出稼ぎのジャワ人にとってはこの上なくありがたいものだ。
インドネシア政府が推し進めているのは「UMKMの成長」である。
UMKMとは「Usaha mikro kecil menengah」の略語で、「中小零細事業者」を指す。
Gudeg Yu Djumは地方都市のUMKMそのものであり、この店の躍進は政府の政策方針に100%合致する。
工業分野においてさまざまな事項をオンラインで共有する仕組みは「インダストリー4.0」として確立しつつあるが、小売・飲食分野でも同様の現象が起き始めた。
インダストリー4.0の導入は、ジョコ・ウィドド大統領の選挙公約でもある。
Gudeg Yu Djumの本店は、今もジョグジャカルタ市内ガジャマダ大学の北側に位置している。
何も知らない外国人から見れば、ローカル色の強いごく普通の食堂だ。
しかしこの「ごく普通の食堂」は、明日のインドネシアの姿を表している。
【Gudeg Yu Djum本店】
住所:Karangasem mBarek CT III/22 Jl. Kaliurang km. 4,5 Yogyakarta, Indoensia
電話番号:0856 286 6001
営業時間:5:00~19:00
URL:http://gudegyudjumpusat.com/
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