昨今、世界的な物価高が起こり、ASEANでもその動向が懸念されているが、同地に展開する日本企業が懸念するべき問題は現地情勢だけではない。
日本とASEANを移動する場合、人は空で移動するが、材料や物資などは海で運搬されることが多い。
そして、前回台湾有事のリスクについて紹介したが、もう1つ懸念するべき場所がある。
それが南シナ海だ。
実は、南シナ海では中国による海洋覇権、つまり“南シナ海は中国のものだ”とするような強硬かつ危険な動きが続き、同海域を通る船舶の安全が脅かされる可能性がある。
近年、中国による危険な行動に対し、南シナ海に面するベトナムやフィリピンなどASEAN各国は懸念を強めている。
例えば、2020年6月、ベトナムが領有権を主張する南シナ海・西沙諸島でベトナム漁船が中国船2隻に襲われ、魚や機材などを強奪される事件が発生し、ベトナム政府はその後中国に強く抗議した。
しかし、中国は「西沙諸島は中国のものだ」とベトナムの抗議を一蹴するなど強気の姿勢を堅持している。
ベトナムと中国は長年、西沙諸島の領有権を争っており、2020年4月にも、中国海警局(日本でいう海上保安庁)の船がベトナム漁船を沈没させる事件があった。
フィリピンも同様に警戒を強めている。
例えば、2022年3月下旬から4月上旬にかけ、南シナ海のフィリピンの排他的経済水域内でフィリピンと台湾の大学が合同で海洋調査を行っていた最中、中国海警局の船が異常に接近し、数日間にわたって追尾される事件があった。
フィリピンは中国に対して強く抗議した。
2021年11月には、南シナ海の南沙諸島にある岩礁で、フィリピンの民間補給船が中国海警局の公船によって航行を妨害された上に放水を受ける事件があった。
民間補給船2隻は、フィリピン軍兵士が常駐する同岩礁に物資を運搬している最中に妨害を受けたという。
2019年6月には、南シナ海でフィリピン漁船が中国の漁船に衝突され沈没した。
乗っていた船から投げ出されたフィリピン人の乗組員22人は、近くを航行していたベトナム船に救助され全員無事だったが、中国とフィリピンの間では今日でも緊張が続いており、いつまた起こっても不思議ではない。
一方、中国の人民解放軍は2020年8月、南シナ海北部にあり台湾と領有権を争う東沙諸島を支配下に置くことを想定した大規模な上陸訓練を実施した。
東沙諸島は台湾の南西に位置し、日本とASEAN各国を結ぶ船舶が航行するルート付近にある。
南シナ海では中国による人工島の建設、軍事滑走路や原発などの建設が進み、既成事実化が進んでいる。
仮に米中対立が悪化し、台湾有事となれば、南シナ海を航行する日本船舶が臨検や拿捕(だほ)などの被害に遭い(日本が米国や台湾との協力を強化すればなお)、ASEANに進出する飲食業界にも大きな影響が出る恐れがある。
今後の動向を注視する必要がある。
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