【2】難題の多い個人大家との賃貸契約
今年に入って実際にあったロードサイドの店舗を展開する日系チェーン店の事例。
チェーン店の代表から、バンコク郊外の物件で大家が個人のため、心配なので仲介として間に入ってほしいと頼まれた。
相手の個人大家曰く叔母の土地を借り、建物を立てて商売をしていたが、移転するためその物件に「ForRent」と張り紙をしていたところをチェーン店代表が見つけたのだそうだ。
ロードサイド物件は、賃貸人が実は本当の賃貸人でなかったり、転貸主だったりということがよくある。
物件を借りるにあたって土地権利書(チャノート)を確認し、
貸主が本当に土地の所有者であるかどうか?
所有者でなくても本当の所有者から公的な委任状や署名した書類を出してもらえる貸主かどうか?
などをしっかり確認しなければならない。
これらがなければ税務登録が出来ず、事業をスタートすることが出来ないからだ。
この物件は結局、相手の個人大家が所有者からの委任状や書類を出すことができないとの理由で契約が流れることとなった。
次にその代表が見つけてきた物件は、上記の問題はクリア出来ていたものの、80歳になるおばあちゃんが大家さん、しかも今までの人生で一度も税金を払ったことがないという。
(但し、VATを除く。)
タイでは税務署は個人の通帳は覗きに来ないと言った不文律がある。
(現在、軍事政権が税収の確保に躍起になっているため、今後この暗黙のルールも崩れてくる可能性があるが)
例えば、個人がマンションの部屋や家を個人相手に貸す場合など個人間での金銭のやり取りは現状調べられることがない。
一方で、個人が法人と契約する場合、その法人が税務申告するため、金銭のやり取りを税務署に知られてしまう。
バンコクのマンションで所有者が法人との賃貸契約を嫌がる理由はここにあるのだ。
今回代表が見つけてきた物件の大家であるおばあちゃんは、郊外に広大な土地を所有し、店舗用物件を建てて個人相手に賃貸しているが、その収入による税金を納めたことがない。
そしてこの広大な土地を相続する息子も同様である。
しかし、これは決してタイでは珍しい話ではなく、タイ人の長男は働かないとよく言われる所以は、働かなくてもこのような 裏収入があったり、2年前にわずかな相続税が導入されたものの、親からの財産をほぼ相続税を払わずに引き継ぐことができるといったところが大きい。
話を元に戻すと、件の土地権利書にはおばあちゃん、息子、娘の名前が入っており、法人契約になるため唯一納税者である娘の名前で契約を進めようという話になった。
しかし、 「法人契約は税金がかかるので、その税額以上を家賃に上乗せして欲しい。」
「領収書を出さなくていい礼金が欲しい。」 などといった要求が始まり、そのチェーン店は近い将来日本で上場を考えていることもありその物件も契約を断念した。
個人物件でこのようなことが二度も続いたチェーン店の代表は、
「これからは商業モールに限定します。」と肩を落とした。
メインメニュー
教えてASEANコラム
お問い合わせ
人気記事ランキング
新着記事
国別で記事を探す
おすすめキーワードで記事を探す
ライター紹介