ここで話は大きく変わるが、インドネシアには「仲買人問題」というものがある。
平たく言えば、仲買人が中間マージンを得る問題だ。
農家から小売店舗へ商品が行き届くのに、複数の仲買人が存在する。
すると小売価格も農家への配当も、仲買人の都合で決まってしまう。
ならば、農家と小売市場を直接つなげばいいと考えたのがLimakilo。
Limakiloは、仲買人の介入を防ぐ流通プラットフォームを運営する。
インドネシアの実体経済を支えているのは、ワルンや屋台といった零細商店、あるいは伝統的市場(パサール)である。
それらに商品を供給する問屋は緻密に組織化・体系化されていて、事業者側としても小さなスペースで商いができるという利点がある。
しかもインドネシアでは決して少なくはない中学校卒や小学校卒が最終学歴の人に対し、雇用を与えている。
だが考えてみれば、現代の経済先進国もかつてはそのような状況だった。
1970年代から80年代にかけてアメリカで放映されていたTVドラマ『大草原の小さな家』という作品がある。
ウォルナットグローブという開拓民が住む町にはオルソン一家が営む雑貨屋があり、この店がウォルナットグローブの消費を支えていた。
インドネシアの場合は大都市から山間部の集落まで、必ず1軒は「オルソンさんの雑貨屋」が存在するというわけだ。
それに着眼したのがLimakiloである。小売店ではなく問屋に徹することで、フェアトレードの農産物を市場に流通させようという発想だ。
Warung Pintarで提供される食事の材料は、Limakiloを通じて取引されるフェアトレード商品に置き換わる。
仲買人問題の解消に、大きな一歩を踏み出したと言っても過言ではないだろう。
Warung Pintarは、アジア地域を代表するベンチャーキャピタルのEast Venturesの社内ベンチャープロジェクトである。
East Venturesは、大手金融機関の重役が退社して設立された企業というわけではない。
創業陣までがベンチャー起業家で、故に他のベンチャーキャピタルよりもさらに野心的な方針が目立つ。
結果的に上場を果たした日本のスタートアップも、East Venturesから資金を調達した例が多々見受けられる。
アジアでは非常に影響力の大きいベンチャーキャピタルだが、そのような企業がフェアトレード問題に注目し始めたという点は特筆に値する。
フェアトレードが確立されると、先述の理由で小売価格は高くなるどころか逆に安くなっていく。
同時に、仲買人が複数人いる流通システムでは農産物の産地が不明瞭になってしまうが、それもなくなる。
仲買人制度は「食の安全」を考える上で、深刻な要素となっているのだ。
フェアトレードの促進は、今後のインドネシアの飲食業界では重要課題になっていくだろう。
【参考】
Warung Pintar
Limakilo
limakilo.id – petani bawang menuju pasar digital | liputan bbc indonesia
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